山田啓作の編纂ノート
星ナビの2003年2月号から連載を開始し、2007年9月号の53回で終了した「Sky Shooting File」の掲載写真をDVD-ROM化することとなった。アマチュア天体写真対象のすべてを網羅したとは言い難いが、主だったものは集められたのではないかと思う。また、印刷では再現しきれない高精細な画像をお届けできるものと期待している。
連載を始めたころは、広角は銀塩フィルム・強拡大は冷却CCDと住み分けていた。まだまだデジタル一眼レフカメラの出番はなかった。ところが、連載の終わるころには、銀塩フィルムは星景写真分野にのみその活躍の場を残しているといってもいい状況だ。ここ数年のアマチュア天体写真の変化は“大きい”を超えて“過激”であった。SSFの連載はその過渡期に重なり、前半は私の銀塩写真を中心に、後半は、岡野邦彦さん、石井隆元さん、蒔田 剛さん、吉澤 隆さん、古庄 歩さん、比嘉良喬さん、中西昭雄さん、岩片かおりさん、今西浩太郎さん、伊藤明彦さん、新居英昭さんら、デジタル写真の名手の方々に画像提供をいただいた。
銀塩写真といえども、スキャナーで読み込み画像処理を施してある。したがって、画像は色調やコントラストなど調整範囲は大きい。ここでの処理はデジタルも含めて、見た目の優しさ、美しさを第一としている。もっとも、それは私にとっての「優しさ」であり、「美しさ」であることは言うまでもない。人それぞれの優しさ・美しさの基準があってよい。
全体の色調は、私の好みで調整してある。コンピュータのディスプレイではそれが伝わらないかもしれない。また、収録の高解像度画像をプリントアウトしても、プリンタによって色調は一定ではない。このデータを、フジフイルム系のラボでデジタル銀塩プリントとして依頼すれば、私が調整した色調、コントラストに近いプリントになる。
ここに収録された天体写真は、2000年以降のものがほとんどである。地方では光害の進行が止まったとは思えないが、大都市近郊では改善はしていないものの進行は止まった気がする。私の主な活動域である富士山周辺も、1990年代の悪化速度は今はない。光害の対策の結果と好意的に考えたいところだが、経済活動の停滞の影響のほうが大きいのだろう。
しかし、ほとんどの天文ファンは、以前ほど晴れない、晴れても長続きしないと感じているだろう。梅雨がはっきりしないとか、いつ梅雨明けになったかわからないといったことも多い。そんな状態では「梅雨明け十日」などという言葉も死語になりつつある。ゲド戦記ではないが、「世界の均衡が崩れつつある」のが現実のものとなりつつある。温暖化の影響と短絡的に考えるのも根拠はないが、それを最前線で感じているわれわれこそ何かをすべきである。しかし、何をどう行動していいのかわからないのがもどかしい。とりあえず、「ハチドリのひとしずく」しかない。しかし、それしかないのも確かだ。1994年11月号のスカイウオッチャー誌62ページに、実篤の筆を借りて書いた「天に星、地に花、人に愛」への路は、さらに遠のいている。
2007年夏 山田啓作