じつは「ステラナビゲータ」を初めて使ってみたのがいつ頃だったかよく覚えていません。「超高速天文シミュレーション」(*)の頃から知っているので、バージョンを重ねるごとにどんどん進化して使いやすくなっているのを見てきました。
(*)1987年アスキー出版局から発売されたPC-9801用ソフト
写真を撮るときは、まずどのような構図で撮りたいのか思い描きます。次にそれが実現できそうな場所選び、それからいつ撮れそうか日時を絞り込んでいきます。ステラナビゲータを使ってその光景が現れるのを数年先まで眺めてみるのは楽しいものですね。合致する日があったらカレンダーに書き入れます。そして晴れそうなら出かけます。
ステラナビゲータは地形の表示ができるので、山と天体を組み合わせた構図を練るときに大変便利です。また、カメラレンズの画角の大きさも表示できるので、どのレンズが撮影に適しているか事前に吟味することができ重宝しています。
星の写真を撮るのに大事なのはタイミングです。景色の良いところで晴れていても、撮りたい星座が風景と一緒に収まる高さと方角になければうまくいきません。また、天の川を撮りたい場合は明るい月が空にあるとうまく写ってくれません。適した日時はいつなのか、ステラナビゲータを使って探してみてはいかがでしょうか。私はこれから見られる星空をステラナビゲータの中でくるくる見ているだけで本当に楽しいです。何か月も後のあの場所でこのレンズを使うとこういう構図が撮れるのかぁ、と。そのようにシミュレーションしているところから撮影は始まっているのです。
グーグルマップとの連携機能。グーグルマップ上で指定したポイントをステラナビゲータで場所指定できたり、ステラナビゲータで探したポイントをグーグルマップで保存したりとか。
地平座標で地形を出して構図を考え、この位置に月がくるのはいつだろう、と思うことがよくあります。ある天体が来て欲しい範囲を指定してその日時を自動でピックアップしてくれる機能があったら便利です。ダイヤモンド富士やパール富士の検索にも使えそうですね。
さらにスカイツリーや東京タワー、城や五重の塔など、有名な建造物が地形とともに表示されると構図を考えるときにたいへん重宝しそうです。
ステラナビゲータのこれからの進化に期待しています!
1968年埼玉県生まれ。豊富な天文知識と卓越したアートセンスで、宇宙と神話の世界を描くアーティスト。絵画制作をコンピューター上で行う「デジタルペインティング」の世界的先駆者でもある。2006年公開の全天周プラネタリウム番組「銀河鉄道の夜」が驚異的な大ヒットとなる。近年は星景写真家としても活躍。
2014年の「原村星まつり」で会場特価になっていたので購入しました。使ってみると、プラネタリウム番組の本日の星空の自動解説機能に感動しました。星空の知識がないのに、趣味として彗星や美しい星雲を撮ってみたいと思って始めましたが、いろいろ勉強できて役立っています。
データ更新画面の情報で見ごろの彗星をチェックしています。週末の星景写真の撮影に向けて、構図や撮影に最適な時間帯を確認し、いつどこに出かけるか撮影計画を立てたりしています。また、月に1回開催している観望会で、どの星を見せるかも調べたりしていますね。
観望会開始の時間帯の星空をステラナビゲータで再現し、どの天体を見せるか考えていきます。観望会の一番の人気は月ですので、まず、「今日の暦」で月齢と月の出没をチェックします。観望会の時間帯に月が見えない場合は、「今日のデータ」で惑星が見えるかをチェックし、その日の観望会の“主役”を探します。
ステラナビゲータでは昼光や月明かりが再現できるので、薄明が終わっていない時間帯からの観望会でどの星が見えるか、すぐにわかるのは便利ですね。
“3DVR眼鏡”で、“VR宇宙旅行”ができる機能がほしいですね。
神奈川県川崎市在住の会社員。2013年にニュースで知ったアイソン彗星の撮影を思い立つ。残念ながらアイソン彗星は撮れなかったが、以来、星空の世界に魅了される。晴れた週末の夜は、仲間と星を見たり、星景写真を撮りに海や山に出かけたりしている。
ステラナビゲータはMS-DOS版の時代から愛用しています。小学生の頃からずっと星好きでしたので、迷わず買い求めました。購入してまず驚いたのは、ずっしりと重い(まるで電話帳のような)マニュアルです。ソフトウエアの機能説明だけでなく、天文学の基礎知識も学べるように工夫されていて、非常に良く考えられたものだったと記憶しています。
基本的なシミュレーション機能に加え、ステラトーク(スクリプト言語)や、観測地データ、天体データなど、ユーザーが独自に作成した外部ファイルを駆使すれば、本当にいろいろな使い方ができました。当時から優れた基本性能を有していたということでしょう。
当時、開発を担当されていた上山さん(学生時代から知り合いだった)や、門田さん、安喰さんたちとも交流があって、そのようなご縁でWindows版 Ver.2の時代から陰ながらご協力させていただき今に至っています。
ステラナビゲータはすべてのバージョンを愛用してきましたが、PCの性能が飛躍的に向上するにつれ、大きなデータを扱い精細な星図が描けるようになったり、写真撮影に便利な写野角が表示できたり、地上風景がリアルな画像対応(現在のパノラマ)になったりと、その機能の充実ぶりは目を見張るものがありました。これらを実現するためには、(普通、ユーザー側にはなかなか伝わらない部分ですが)独創的なアイデアや、開発現場での緻密な作業も欠かせません。その経過を見てきた一人として、ステラナビゲータのこれからの展開も楽しみにしているところです。
私は、「宮沢賢治と星」をテーマに、長いこと研究活動を続けてきました。宮沢賢治が大正〜昭和期にかけての天文愛好者(アマチュア天文家)であったことは、童話「銀河鉄道の夜」や、歌曲「星めぐりの歌」などの作品からも察することができます。
当時の天文知識はもちろん、賢治はどんな星空を眺めていたのか、星好きとしては気になることばかりです。それらの解明にひとつの手がかりを与えてくれるのがステラナビゲータによる検証作業です。
一例を挙げてみると、宮沢賢治が農学校教師時代に書かれた「東岩手火山」という詩があるのですが、これは農学校の生徒たちを連れた夜行登山で、岩手山山頂付近での一場面が描かれています。ここで賢治自身が星空案内人として、生徒たちに星座や天体を解説しているのです。この詩には日付が「一九二二、九、一八」と付されていて、時刻も「三時四十分」頃であることが判明しています。実際にステラナビゲータで賢治たちの見た星空を再現してみると、いろいろなことがわかります。
賢治ははじめに北天の説明(北極星を北斗星と書いていますが、これはご愛嬌)してから、方角は東天へと移ります。シミュレーションするとそこには、もうオリオン座が高く昇っていました(シミュレーション画面参照)。
「縦に三つならんだ星」や、その「下には斜めに房が下がったやう」という感覚も、シミュレーションすることで簡単に理解することができます。「あの房の下のあたりに/星雲があるといふのです/いま見えません」は、もちろんオリオン座大星雲の説明ですね。
このように、賢治が実際に夜空を見た状況を誰でもすぐに確かめることができます。星座早見盤を用いる方法もありますが、より具体的に、かつ多くの情報を得ることができます。
ステラナビゲータ10で、詩「東岩手火山」の星空を再現
宮沢賢治 詩「東岩手火山」より(部分引用)
さうさう、北はこっちです 北斗七星は いま山の下の方に落ちてゐますが 北斗星はあれです それは小熊座といふ あの七つの中なのです
それから向ふに 縦に三つならんだ星が見えませう 下には斜めに房が下がったやうになり 右と左には 赤と青と大きな星がありませう あれはオリオンです、オライオンです
あの房の下のあたりに 星雲があるといふのです いま見えません その下のは大犬のアルファ 冬の晩いちばん光って目立(めだ)つやつです 夏の蠍とうら表です
家族や友人たちと旅行に出て、そこで美しい星空を眺めた経験はありませんか? もちろん天体写真の撮影計画を立てるために、「未来の星空」のあれこれ調べるのも便利ですが、旅先で見た星空の思い出、つまり「過去の星空」を「お気に入り」に保存しておくことも可能です。
「あの日家族で見た三日月と金星がきれいだった」とか、「山小屋で見たあの天の川は本当に美しかった!」そんな思い出の星空のコレクションを、ステラナビゲータに残してみてはどうでしょうか。ステラナビゲータが素敵な星空の思い出アルバムになります。私の場合は、地形も表示させて、リアルにシミュレーション星景で保存しています。
天文愛好家として幅広く活動中。宮沢賢治学会イーハトーブセンター理事。主な執筆(共著)に『宮沢賢治大辞典』(勉誠出版)、『宮澤賢治イーハトヴ学事典』(弘文堂)、『別冊太陽 宮沢賢治』(平凡社)ほか。また、プラネタリウム番組アドバイザーや監修として「銀河鉄道の夜」(KAGAYA Studio)、「二人の銀河鉄道〜賢治・嘉内の青春」(山梨県立科学館)など。