▼はたして何個?の流星が飛ぶのか?
「流星の予測はむずかしい」
かつては1時間あたりに1万個以上もの流星を降らせたこともある「しし座流星群」。はたして今年はどれほどの出現となるのか?じつはこの『?』への明確な答えはない。
●過去の出現記録から今年の「しし群」を予想
●とにかく観測しなければ目撃はできない
●過去の出現記録から今年の「しし群」を予想
「しし座流星群」にまつわるさまざまな?に答えながら、解説してきたこの特集の最後の問いに答えるのが、じつはいちばんむずかしい。特集の冒頭であらかじめ宣言したように、流星群の出現時刻や、その個数を正確に予想することはできないからだ。
これまで見てきたように、流星群とは「母彗星が太陽に接近した時にその核から放出した砂粒から小石のぐらいの大きさのチリ=流星素物質が、彗星軌道の周りに拡散していき、その流星素物質の流れが地球と遭遇したときに、大挙して地球大気に突入し、プラズマ状の塊となって発光」しているものであった。この流星素物質は、たいへん小さいので、個々にその存在を直接確認することはできない。逆に、地球大気という検出器によって、流星の明るさや数、もしくは流星のスペクトルを観測することで、彗星からの放出物がどんな物質でできているのか、また、大きさの分布はどうなっているかなどを調べることができる。つまり、流星群を調べることで、われわれは彗星核からの、放出物の太陽系内の分布を調べることができるわけだ。
そこで、今年1999年の「しし座流星群」の、出現状況を考える上で参考になるのは、過去の流星群の記録ということになる。19世紀以前の記録は定量的なものとは言えず、流星群規模の正確さには欠けるが、ある程度の参考にはなろう。
地球と、母彗星の位置関係をもとに、年ごとの流星群出現数を表わした。
(Sky&Telescope P.29 November,1995 を参考に作成)
この図では、横軸に母彗星が、地球軌道平面を北から南へ通過(降交点通過)してから、何日後(+の数字)、あるいは何日前(−の数字)に、地球が母彗星の軌道に接近(降交点黄経を通過)するかをとり、縦軸に、その時の彗星軌道と地球との距離(単位はAU=天文単位)をとったもの。縦軸の+数値は、地球より内側の太陽よりを、−の数値は、外側を母彗星が通過したことを示す。丸の大きさは記録上の流星群の出現規模を、数字はその西暦を表わしている。
この図にプロットされた過去の出現例からは、地球が母彗星軌道の外側にあり、かつ母彗星の通過後に流星群の流れに遭遇したときに、より多くの出現数が記録されていることがわかる。青色の★マークで示した今回の、しし座流星群の、流星素物質の流れとの遭遇は、計算上、今年1999年が距離−0.0071AUで623日後となる。
過去の出現状況からは、1時間あたり数千個以上の出現に達するいわゆる「流星嵐」となるのは、彗星の軌道か地球より内側の0.01AU(天文単位=地球と太陽との平均距離)以内で、彗星が地球軌道平面を通過してから1000日以内に、流星の素となる流星物質の流れに遭遇した時に高い確率で流星嵐が起きていることがわかる。1999年は、まさしくこの条件に当てはまり、研究者によるとこの条件で流星嵐となるのは60%(1時間あたり数万個という大流星嵐となる確率はもっと低い)あたりとしている。もちろんこれは過去の経験則で、同じ条件であっても、流星の1時間あたりの出現数が数百にとどまる「流星雨」にしかならなかった例も多数あるので、楽観はできない。昨年1998年がよい例である。
一方、昨年の極大前に、1998年と1999年で、どちらがより激しい出現が期待できるかとの予測が行なわれ、「仮りに1998年の11月18日に大きな出現が無く、明るい流星が多かったなら、1999年には1998年よりも暗い流星が比較的多いものの、流星出現数はより多い」との説が唱えられもした。これは前回の1965年〜1966年の出現パターンの繰り返しを想定したケースで、実際に昨年は大きな出現が無かっただけに、今年の出現数の増加を予測している点はなかなか面白い。はたして今年、どういう結果になるのであろうか。
●とにかく観測しなければ目撃はできない
かりに、今回の「しし座流星群」が、1時間あたりに百個ほどの出現に留まったとしても、年間最大のペルセウス座流星群と同等かそれ以上の流星を見ることができるわけで、天文ファンとしてはこれを見逃すわけにはいかない。極大時刻や流星出現数が正確に予想できない以上、11月17日の夜から準備を始めて、夜半以降18日の明け方にかけて、万全の構えで夜空を見上げてほしい。
霧高原でとらえた大火球(1998年11月18日4時10分から5分露光)
ニコマートFTn ニッコール28mmF3.5(絞り開放)
フジカラースーパーGエース800(ISO800)
撮影:スカイウオッチャー編集部:高田+梶谷邦人 撮影地:朝霧高原
とにかく、実際に夜空を見上げてほしい。いくら1時間あたりの流星数を見積もったり、日本では夜間に極大とはならないという予想が出ていたとしても、当夜に、実際に夜空を見上げなければ、流星を目撃するこができない。
最後に天気について。11月中旬は、まだ本格的な冬型になる日も少なく、全国的に好天が多い時期なので、晴れる確率も高いだろう。
しかし、極大日は1日のみ。その日が曇り・雨ではどうしようもない。遠征観測する人の場合は、当日の天気予報を聞いてから観測地を決定すればよいが、自宅にて観測する人は今からテルテル坊主にお願いしておこう。
では、今年のしし座流星群を、ゆっくりとお楽しみください。
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