以下の文章は、7月5日発売のスカイウオッチャー8月号の「From101(スカイウオッチャー編集室から)に掲載した「スカイウオッチャー休刊の理由」の全文です。
「立風書房からの『スカイウオッチャー』の発行は8月5日発売の9月号をもって終了し、誌面での“休刊”の告知は、7月5日発売の8月号。広告を出していただいている望遠鏡メーカー・ショップ等へは6月中旬にお知らせする……」
こうして5月下旬のある日、1983年7月5日発売の8月号から17年にわたり刊行を続けてきた本誌の事実上の終焉が決まった。休刊の理由は、発行・発売元の立風書房の営業的判断だ。つまり「スカイウオッチャーの刊行に要する出版社としての全経費が、それによる収入を上回っている」という厳然とした事実による。
アストロアーツ・スカイウオッチャー編集部における雑誌の編集は読者への責任であるが、それと同時に雑誌を発行するということは出版社である立風書房の経済活動である以上、利益の出せなくなった雑誌を休刊にするという判断は間違ってはいない。出版界が、さらには社会全体が「星など見てる場合ではない」(という気分が蔓延している)今、天文雑誌を続けていくには、圧倒的な読者数を獲得するか、雑誌を核にして関連書籍や通信販売などの総合的事業展開を図るか、営業基盤を充分に安定させるだけの広告収入を得るかしかない。そのいずれをも持ち得なかった本誌が休刊となるのはある意味必然とも言える。
もちろん編集部にも、その責任の一端がある。
「君の美学によって、雑誌を作っている」ここに到る何回かの会議の中で、立風書房の阿部庄之助社長は私にこう言った。正しくは私を含めた君たちの美学なのだが、要は編集部員の価値観に基づく自己満足的な雑誌編集をせず、営業的に成功する雑誌を作れということだ。
こういった軋轢は編集側と営業側の間では珍しくはないことのようだが、広告を含めた雑誌営業は立風書房、編集はアストロアーツといった分業体制がその問題をさらに複雑にしていた。ともすれば私たち編集部員に「商業雑誌を作っているという覚悟」が不足し、結果的に本誌を楽しみにしていただいていた読者の皆さんの期待を、休刊という形で裏切ることになってしまった。誠に申しわけなく平にご容赦願いたい。「両社の共通の利益のため」の総合事業も充分には展開できなかった。毎月の雑誌を編集していくのに精一杯で、天文関連書籍の充実や、アストロアーツのHPやデジタル関連事業との連動も思うように進められなかった。
広告収入という面でも、立風書房広告部と編集部とが一体となって、より広範な望遠鏡メーカーやショップにアプローチするという協調体制を築き得ず、常に「誰の利益を優先して雑誌を編集するのか?」という対立を解消できなかった。そして、結果的に休刊という形で、広告を通して本誌を応援してくださっていた望遠鏡メーカーやショップの皆さんの期待を裏切ることになってしまった。この点もお詫びしなければならない。
多くの場合、休刊を告げる編集長の挨拶は、突然に、最終号にて、その雑誌の目指してきた方針と成果をまとめた上で「歴史的使命を終えた」ことになるのが典型なのだが、こうして休刊に到る経緯をここに記したのは、うやむやのうちに美化される雑誌休刊の理由を読者のみなさんに正しく伝えないというのは真摯な態度ではないと思うからだ。などという「青臭いことを言っているから休刊になるんだ」との声もあちこちから聞こえてきそうだが、だからこそスカイウオッチャーがここにあるのだとも言いたい。
幸い、最後の編集後記まで後1か月の時間が残されている。編集部の反省と今後の展開のために、本号59ページにてアンケートをお願いした。本誌の成果と歴史的使命は、読者の皆さんの評価を待ってから考えても遅くはあるまい。なお、フォトコン応募や投稿・情報などは、通常の締め切りを延ばして、なるべく次の9月号に反映させるつもりだ。 (編集部を代表して、編集長川口記す)
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