【1997年11月 6日 国立天文台・天文ニュース】
カナダ理論天体物理学研究所(Canadian Institute for Theoretical Astrophysics)のグラッドマン(Gradman,B.J.)らのグループの報告によりますと、 10月はじめ、天王星に新たに二つの衛星らしい天体を発見したということです。 これらの天体はパロマー山天文台の5メートル反射望遠鏡に装備した コスミックカメラで9月6日および7日におこなったCCD撮像から見出したもので、 暗い方の S/1997 U1 は天王星の東方6分の位置にあってR等級が21.9等、 明るい方の S/1997 U2 は西北西7分の位置でR等級が20.4等と報じらました。
この報告に基づいて、アメリカ、ニューメキシコ州のオファット(Offutt,W.)が 10月9日に U2 の観測に成功、さらに10月末にはパロマー山の5メートル望遠鏡 およびハワイの2.2メートル反射望遠鏡がいずれも二つの衛星の再観測に成功し、 新衛星が存在することは確実になりました。天王星に衛星が発見されたのは、 1986年に宇宙探査機ボイジャー2号が接近して以来11年ぶりのことです。
それらの観測をもとに、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの マースデン(Marsden,B.G.)らが求めた暫定軌道によりますと、 U2 は離心率が大きく(0.5程度)、逆行で、天王星にもっとも近づく近点距離が 約0.018天文単位です。また U1も逆行と思われますが確定的ではなく、 近点距離は約0.032天文単位になります。 これは、どちらも、これまでに知られていた衛星のはるか外側を公転する衛星です。 衛星の反射率を0.07と仮定して計算しますと、U1 の直径は約80キロメートル、 U2 の直径は約160キロメートルになるということです。
天王星にはこれまでに15個の衛星が知られていました。 そのうち、ハーシェル(Herschel,William)が1787年に発見したオベロンとチタニア、 ラッセル(Lassell,William)が1851年に発見したアリエルとウンブリエル、 カイパー(Kuiper,Gerald.P.)が1948年に発見したミランダは地上からの観測で 発見した衛星です。1986年1月に宇宙探査機ボイジャー2号が天王星に接近したとき、 それら5個の衛星の内側にさらに10個の新しい衛星を発見したので、 天王星の衛星は15個になったのです。最初に発見された衛星に、 シェクスピアの戯曲「真夏の夜の夢」の妖精の王と王妃のオベロン、 チタニアの名を付けたことから、そのあと発見された衛星にも、 すべてシェクスピアの作品に出てくる人物、 妖精の名が付けられるようになりました。 ボイジャー2号が発見した衛星には、ジュリエット、オフェリア、コーデリア、 ポーシャ、デスデモーナなどの名が付けられています。
今回発見された16,17個目の衛星は、今のところ S/1997 U1,S/1997 U2 と 記号で呼ばれていますが、いずれ国際天文学連合に属する 「太陽系天体命名委員会」が適当な名を付けると思われます。 やはりシェクスピアの作品から名付けられるのでしょうか。
参照 IAUC 6764(Oct.31,1997)、 IAUC 6765(Oct.31,1997)
1997年11月6日 国立天文台・広報普及室