とくに明るい星や目立つ星には、固有の名まえが付いているものがあります。シリウス、アンタレス、ベガ、アルタイル、デネブなどなど、代表的なものだけでも数十個あります。そうした名まえの多くは昔から使われているもので、主にギリシア語やラテン語、アラビア語などに由来しています。
名まえには意味があります。星座の形や、その星の印象、昔の人びとの見方などと、深い関わりがあります。例えば、さそり座の心臓のところに輝くアンタレスは、「アレス(火星)に対抗するもの」という意味のギリシア語です。アンタレスの赤っぽい色が火星の色と似ていることや、たまに火星が近くに並んで見えるときに、その赤みを競い合っているかのように見えることから、そう呼ばれています。
デネブははくちょう座の星で、(鳥の)尾という意味です。はくちょう座α(アルファ)星でもあります。
七夕の星、おりひめぼしとひこぼしは、ベガとアルタイルのことです。ベガは(降りる)鷲、アルタイルは(飛ぶ)鷲、という、どちらもアラビア語です。星の並びから鷲の姿を想像して付けられたと言われています。おりひめ・ひこぼしという呼び方は、七夕のおはなしにちなんでいますから、その起源は中国です。
このように、名づけのルールや由来によって、ひとつの星に何通りかの呼び方があります。どの名まえで呼んでもよいのです。星の名まえとそのいわれを知ると、親しみもわいてきます。昔の人が、星の特徴をよく観察し、想像力をはたらかせて、星に名まえを付けた気持ちに思いをめぐらせてみるのも楽しいものです。