1999年秋に見つかったリニア彗星(C/1999 S4)がこの夏、明るくなります。彗星が地球にもっとも近づく7月23日ごろには3等〜5等台となり、肉眼でも見えるほどの明るさになることが期待されています。 ここでは、リニア彗星についてのQ&Aをお送りします。スカイウオッチャー本誌と併せてご覧ください。 |
彗星ってどんな星? | |
彗星は、星座を形づくるようなふつうの星たちとは違って、太陽のまわりを巡っている太陽系の天体です。彗星はほうき星ともよばれるように、太陽に近づくと尾をひいた姿をみせます。また、惑星のように日ごとに位置を変え移動していきます。 |
彗星って水星とは違うのですか? | |
彗星は「すいせい」と読みます。惑星の水星と同じ読み方をしますが、別の天体です。水星はもっとも内側をまわる惑星のことですが、彗星は太陽系をただよう小さな天体の一種です。 |
彗星って流星とは違うのですか? | |
長い尾をひいた彗星の写真を見ると、何かジェットを噴き出して飛んでいく天体を想像するかもしれませんが、それは誤りです。夜空をスーッと流れる流星のようなものでもありません。彗星の尾はロケットのジェットのように彗星を動かすものではなく、蒸発したガスやチリが光っているものなのです。 |
彗星ってどうして彗星とよばれるのですか? | |
彗星から尾が伸びると、その形は「ほうき」に似ています。そのため、中国語の「掃く」という意味の「彗」の字があてられ、中国では彗星とよばれました。日本語ではそのまま「ほうき星」ともよびます。 |
彗星がきても地球はだいじょうぶですか? | |
夜空に突然現れ、尾をひいたアヤしい姿をしている彗星は、何か悪いことが起こる前ぶれとして昔から恐れられてきました。しかしそれは迷信で、リニア彗星が地球に変化をおよぼすようなことはまずありません。しかし将来、地球にぶつかってくる彗星がみつかる可能性もあります。実は、リニア彗星はそうした危険な天体をさがしているときに、たまたま見つかった彗星の一つです。 |
彗星はいくつあるの? | |
これまでにたくさんの彗星が見つかっています。記録に残っているものだけでも2000個ほどあります。また、新しい彗星が次々に発見されています。太陽系が誕生したころに、何億個もの彗星ができたと考えられています。これらの彗星のほとんどは、太陽から遠く離れた彗星の巣とよべるような空間に、今もたくさん残っていると考えられています。 |
彗星はどこから来るの? | |
太陽から光の速さで1〜2年もかかるような遠いところに、太陽系の外側をとり囲むように彗星の巣とよべるような空間があって、そこにたくさんの彗星があるのではないかと考えられています。そこから何かのきっかけで太陽に向かって落ちはじめ、太陽に近づいてくると蒸発をはじめ、ぼんやりと尾を引いた彗星らしい姿になるのです。 |
彗星って何でできてるの? | |
彗星の正体は、よく「汚れた雪玉」にたとえられます。氷のかたまりに岩石質や金属質のチリのようなものが含まれているものと考えてられています。氷といっても水の氷だけでなく、二酸化炭素やアンモニア、メタンなど、いろいろな物質が含まれているようです。これが彗星の核となっていて、この核が太陽に近づいてくると、温度が上がり、表面が蒸発をはじめるのです。彗星のコマや尾は、核から蒸発したガスやチリなのです。 |
彗星の大きさは? | |
彗星の本体である核は、ガスやチリに覆われているため、確かな大きさを測ることはできませんが、直径数キロから数十キロメートルと考えられます。天体としてはとても小さいものです。 ちなみにハレー彗星の核の大きさは、探査機ジオットが接近して撮影したところ、15km×8kmの大きさであることがわかっています。 |
彗星のコマって何? | |
彗星の本体である核のまわりを丸くとりかこむ部分のことです。核から放出されたガスやチリでできています。コマとはラテン語で髪という意味です。 |
彗星はどうして尾が伸びるの? | |
彗星のコマは、太陽に近づいてくるにつれ、太陽風やそれに伴う磁場の影響を強く受けるようになります。また、核から放出されたチリは、太陽光の圧力の影響を受けます。こうしてガスやチリは太陽とは反対の方向に押し流され、尾が成長するのです。 |
彗星の尾はなにでできているの? | |
彗星からは2種類の尾が伸びます。イオンの尾とチリの尾です。イオンの尾は青白く、主に一酸化炭素のガスです。チリの尾は砂粒のような細かな粒子でできています。イオンの尾は、太陽と反対方向にまっすぐ伸びます。チリの尾も太陽とは反対に流されますが、たくさんのチリが核から放出されたものなので、形や明るさは彗星によって実にさまざまです。 |
彗星の尾の長さはどのくらい? | |
これも彗星によりさまざまです。長いものでは1億5000万キロ(太陽から地球までの距離)も伸びるものもあります。リニア彗星の尾の長さは、確かな予測はできません。リニア彗星の核が活発に蒸発すれば、長い尾が見られることでしょう。 |
リニア彗星ってなんですか? | |
リニア彗星は、この夏、肉眼で見える明るい彗星になるかもしれないと話題をよんでいる彗星です。昨年9月27日に発見されました。リニア彗星とよばれる彗星は、実はこのほかにもたくさんあるのですが、これらはそれぞれ符号がつけられて区別されます。この夏の大きな話題となっているのは、 C/1999S4という符号でよばれるリニア彗星です。 |
リニア彗星のリニアってなんですか? | |
彗星にはふつう、発見した人の名前がつけられます。百武彗星といえば百武さんが発見した彗星ですし、ヘール・ボップ彗星といえばヘールさんとボップさんが発見した彗星ということです。ではリニアってだれなのでしょう? リニアとは、人の名前ではなく、発見したプロジェクトの名前です。Lincoln Near Earth Asteroid Research (LINEAR)という、地球にぶつかる可能性のある天体を本格的に捜しだそうというプロジェクトの名前なのです。発見されたときは彗星であることがわかりませんでしたが、あとになって彗星であることがわかり、リニア彗星となったのです。 |
リニア彗星ってたくさんあるみたいですが? | |
リニア彗星を発見したLINEARプロジェクトでは、地球へ接近してくる可能性のある小惑星などの小天体をリストアップすることを目的としています。掃天観測を自動化し、効率的にたくさんの小天体を新発見しています。中には小惑星だけでなく、彗星も発見されることがあります。リニアによって発見された彗星は、2000年5月現在48個にのぼります。これからもリニア彗星とよばれる彗星は増えつづけるでしょう。 |
リニア彗星は何年ごとに来るの? | |
彗星には、ある周期で太陽に近づいてくるものもありますが、そうでないものもあります。周期的に戻ってくる彗星の軌道は楕円軌道をしていますが、リニア彗星の軌道は放物線に近く、太陽に接近したあとは、ずっと遠いところまで行ってしまいます。 |
リニア彗星は何時何分に飛ぶの? | |
彗星は夜空をスーッと飛んだり、流れるように見える天体ではありません。ですから何時何分に飛ぶというようなものではないのです。動くことは動くのですが、見かけの動きはゆっくりとしています。リニア彗星が地平線上に出ている時間帯(7月下旬は日の入後の2〜3時間)で、お天気などの条件がそろえば、双眼鏡や望遠鏡でじっくりと観察できる天体です。 |
リニア彗星はいつ見えるの? | |
リニア彗星は8月上旬まで明るく見られます。7月中旬からは夕方の日の入後、北西の空に見えています。また、7月中旬までは明け方の北東の空にも見えています。7月23日に地球にもっとも接近し、26日には太陽にもっとも接近します。この前後は、彗星がもっとも明るくなりますので、7月下旬がもっとも見やすい時期であるといえます。 |
リニア彗星が一番明るくなるのはいつ? | |
7月下旬です。彗星は太陽に近づくほど明るくなります。また、地球との距離が小さいほど明るく見えます。7月23日に地球に最接近し、7月26日には太陽にもっとも近づきます。このころが最も明るくなるはずですが、彗星の核に変化が起こり、突然明るくなったりすることがあれば、この限りではありません。 |
リニア彗星って本当に明るくなるのですか? | |
彗星は太陽に近づくにつれ明るくなります。4等星の光をぼんやりと広げたくらいの明るさになると言われていますが、実際のところは正確に予測することはできません。なぜなら、明るさを左右する彗星核の特徴を直接観測できないからです。明るくならなければ、肉眼で見えないまま遠ざかっていってしまうかもしれません。予想以上の明るさとなって、肉眼で見えることを期待したいものですね。 |
リニア彗星ってどうして7月ごろしか見えないの? | |
リニア彗星の軌道は、太陽を焦点とする放物線に近い形をしています。彗星は太陽に近づくにつれ加速し、太陽にもっとも近づいたところでもっとも速く運動し、遠ざかるにつれ減速します。彗星の核が活発に蒸発し、明るく見えるのは太陽に近づいた前後ですので、条件がよいのは太陽に近づいたごく限られた期間ということになります。地球との位置関係も考えると、観察しやすいのは5月〜8月上旬で、特に見やすい期間は、もっとも明るくなる7月下旬ということになります。 |
リニア彗星はどこで見たらいいの? | |
7月下旬に彗星を見るなら、北西の方角がよく開けた場所を選ぶことが重要です。なるべく市街地から離れた空が暗い場所で、視界をさえぎるじゃまものがない場所がよいでしょう。星がよく見える条件も大切ですが、交通の便や安全なども考えて場所を選び、できれば昼間のうちに下見もしておきましょう。 |
リニア彗星は空のどこに見えるの? | |
彗星は動いていく天体ですから、きょうは何座のどのあたりにいるのか、まずは位置をしっかりと確認しておき、その星座が何時ころ、どちらの方角に見えるかを調べておけば、空のどのあたりに見えるかわかります。 |
リニア彗星はどうやって見ればいいの? | |
空の暗い場所で、位置をしっかりと確認し、じゅうぶんに目を暗やみにならせば肉眼で見えないこともないかもしれませんが、できれば望遠鏡か双眼鏡を用意しましょう。望遠鏡や双眼鏡で彗星を入れるのは、はじめての人には難しいかもしれません。望遠鏡は使い方に慣れておきましょう。双眼鏡は手ぶれをするので、できればカメラやビデオ用の三脚に固定しましょう。三脚にとりつけるには、専用部品が発売されています。また、これらの機材がなくても、各地で行われるリニア彗星を見るイベントに参加するというのもいいでしょう。 |
リニア彗星はどんなふうに見えるの? | |
望遠鏡や双眼鏡でのぞくと、ふつうの星のように光の点ではなく、ボーっと広がる光をまとったように見えます。照明など明るいものを視界に入れないように工夫し、暗いところによく目をならしましょう。するとコマの広がりや尾が伸びているようすも見えてくることでしょう。 |