Q:デジタル一眼レフカメラで天体を撮ると、いつも同じところが明るくなったり、ノイズが出たりします。どうしたらいいですか?
(千葉県 Tさん)
A:デジタルカメラ固有のノイズが発生しています。このノイズは連載2回目(3月号)で対策を紹介したノイズとは質が異なるので、「ダーク補正」機能でとり除きましょう。
ダーク補正には「ダークフレーム」が必要です。ダークフレームとは、撮像素子にまったく光を当てない状態で撮像してカメラ固有のノイズだけが記録された画像のことです。ダーク補正とはこのデータを天体を撮像した画像から引き算することで、ノイズをキャンセルするしくみです。冷却CCDカメラのユーザーには常識となっていますが、デジタル一眼レフカメラの後処理にも応用できます。
ただしこれらの処理をするには、現像前の、撮影したままのデータ(RAWデータ)が必要です。現像処理をすると、さまざまな演算が行われるので正確なダーク補正ができません。ステライメージ5では、このデジタル一眼レフカメラのダーク補正に対応しています。処理の手順を見ていきましょう。
画像1:
ダーク補正をする前の画像を拡大したところ。星々に混ざって、赤や青、緑の点が見られる。これがCCDによるノイズである。日中やフラッシュをたいた撮影ではこのようなノイズは発生しない。天体写真用に特化されたカメラはこのノイズの発生をかなり抑えることに成功している。 |
画像2:
ダークフレームの同じ箇所の拡大。ノイズのみが映し出されている。CCDによるノイズは、機種によって程度の差はあるものの、必ずあるといっていい。CCDの特性に拠るものが大きいので、ダークフレームを重ねる天体画像とは、同じカメラ、同じ露光時間、同じ温度で撮影する。 |
画像3:
ダーク補正を行った後の同じ箇所の拡大。ドットが消えているのがわかる。ただし、天体画像のみに発生し、ダークフレームには写らなかったノイズに関しては補正できない。できるだけ同じ条件になるよう、撮影終了後、機材の片付けの最中に行うのがおすすめ。
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まず、ダークフレームを撮影しましょう。撮影の終わったカメラのレンズにキャップをして、処理したい天体画像を撮ったときと同じ時間だけ露出をかけます。ノイズは温度に影響されやすいので、できれば、天体を撮影した直後に同条件下で撮っておくことをおすすめします。また、ノイズのレベルにはランダム性があるので、複数枚撮っておきます。ダークフレームの撮影は望遠鏡も架台も無いので、撮影が終わって後片付けの最中に撮っておくとよいでしょう。必ずRAWデータで記録します。
さて、撮像したダークフレームをステライメージ5で読み込みます。RAWデータが記録されたファイルの読み込みにはオプションの設定があるので「ベイヤー配列」を選択します。これで撮像されたままのデータを読み込むことができます。
ダークフレームが複数枚あるときは、すべて読み込んでから、メニューバーの「コンポジット」−「バッチ」を選んでコンポジットします。位置合わせはせずに、合成方法として「加算平均」を選びます。3枚以上ある場合は「範囲外の値を除外」にチェックを入れて、範囲を2σにしておきます。この作業で、で個々のダークフレームを撮像している間に発生した突発的なノイズを除去することができます。
コンポジットしたファイルは新しい名前で保存をしておきましょう。
天体を撮影したファイルを、ダークフレームと同じように「ベイヤー配列」で読み込み、ダーク補正を行います。ツールバーの「画像」−「ダーク/フラット補正」をクリックしましょう。ダーク補正後は、「ベイヤーRGB変換」でカラー化します。最初に見られたノイズが消えているのがわかるでしょうか。この後はデジタル現像、マトリクス色彩補正などで画像を仕上げていきますが、それはまたの機会に。
画像4:
「ダーク/フラット補正」のダイアログを開いたところ。「ダーク補正」にチェックを入れ、ダークフレームのファイル名を指定して『OK』をクリックすれば、ダーク補正がはじまる。
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画像5:
1月初旬に話題となったマックホルツ彗星とすばる(M45)の競演。比較的ノイズの少ない機種で撮影を行ったが、拡大するとCCDによるノイズがみられる。
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画像6:
左の画像にダーク補正を行ったもの。この大きさでは変化がわかりにくいが、画像右端の赤っぽいノイズがなくなっている。
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