今年の春先にマイナス1等級の明るさとなり、夕方の西空に素晴らしい雄姿を見 せたヘール・ボップ彗星が、ふたたび観測可能となっている。
ヘール・ボップ彗星は、大都会のまん中でも肉眼で見られるほど明るくなり、天 文ファンはもとより、広く一般の人々にも目撃され、メディアを中心に大フィー バーを起こした。しかし、5月の中旬を最後に1等級台という明るさのまま、夕 空低くなり、日本からは見えなくなってしまった。
あれから5ヶ月。地球から遠ざかるとともに、一般の人々の記憶からも少しづつ 消えかけているヘール・ボップ彗星だが、実はまだ肉眼彗星として見えているの だ。5月に太陽に近づき日本から見えなくなった彗星は、その後、南半球の空で 見えるようになり、緩やかに暗くなりながらも、9月には5等級と観測されてい る。すでに、太陽から3天文単位以上も遠い宇宙空間にありながらも、いまだに 肉眼彗星としての明るさを保つヘール・ボップ彗星は、やはり世紀の彗星にふさ わしい。
そして今、ふたたび日本からヘール・ボップ彗星を見られるチャンスが訪れてい る。とはいえ、日本からは9月から10月のわずか1カ月ほどの期間、それも明け 方の超低空にようやく顔を出す程度でしかない。現在、明け方の薄明開始時の彗 星の高度が最も高くなっているが、それでも日の出1時間前でわずかに8.7度に しかならない(東京での値)ので、観測は楽ではない。さらに、彗星はどんどん 南に移動しているため、条件は悪くなっていき、来月には見えなくなってしまう ため、観測のチャンスはとても少ない。
去りつつあるヘール・ボップ彗星を見ようと、9月初めから国内の彗星観測者た ちが観測を試みていた。薄明中の低空という悪条件であったが、中旬を過ぎると たくさんの人が彗星との再会を果たしている。明るさも5等台から6等台と報告さ れている。これは昨年の夏頃とほぼ同じ明るさであるが、前述のように観測条件 は大変厳しく、肉眼はもとより、小さな双眼鏡でさえも彗星を探すのは非常に難 しい。空が充分に暗いところで、南東の空が良く晴れている日を逃さずにトライ してみよう。
この時期、ヘール・ボップ彗星が一番良く見えるのは、東京では明け方の4時 30分頃、大阪では4時50分頃、福岡では5時10分頃となる。彗星は薄明開始直後の、 うっすらと明るくなりつつある南東の空の、地平線のすぐ上の辺りにいる。なお、 彗星はとも座からほ座へと移動していくが、あまり馴染みのない星座なので、お おいぬ座のシリウスを目印にし、おおいぬ座の足元の星を起点として、その左下 を探せば良い。幸いこの辺りには明るい星が多いので、星図を頼りに1つ1つ星 を辿って行けば、ヘール・ボップ彗星までたどり着くことができるだろう。
今後、ヘール・ボップ彗星はどんどん南下しつつ、どんどん暗くなっていくので、 日本からは、今回が最後のチャンスといってよい。発見以来2年もの長きに渡っ てたくさんの話題と感動を与えてくれたヘール・ボップ彗星を見送るために、頑 張って早起きしてみてはいかがだろう。
10月12日、東京での日の出1時間前(4時34分)の星空