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星ナビ news file 2004年しし座流星群の流星体による月面衝突発光関連情報
情報提供: 大西浩次(長野工業高等専門学校)
柳澤正久(電気通信大学)
しし座流星群の見える時期がやってきました。しし座流星群の母天体テンペルタットル彗星の回帰した1998年から6年目の今年、これまでの予報によれば、流星の大出現は期待できそうにありません。ですから、月面衝突発光が観測できる可能性は極めて低いでしょう。しかし、ここ数年、マックノートとアッシャーらが発展させたダスト・トレイル理論が進展し、非常に古いダスト・トレイルの予報も行われるようになってきました。
ところで、月面衝突発光が検出できるほど大きな流星体は、拡散してしまった非常に古いダスト・トレイルによるものかもしれません。事実、1999年のしし座流星群の流星体に伴う月面衝突発光の現象の数例は、予報された1899年ダスト・トレイルの月の接近時刻とはずいぶん違った時刻に起きているものもあります。しかし、それらの発光例は、まだ計算できていない非常に古いダスト・トレイルに起因するものかもしれません。また、今年の8月のペルセウス流星群では、日本の観測チームが1回帰ダスト・トレイルによる月面衝突発光を検出し、世界で初めてしし座流星群以外の流星体による月面衝突発光の存在を確証しました。
電気通信大学の観測チーム(代表:柳澤正久)は、月面衝突発光の観測で、特定のダスト・トレイルではなく、非常に拡散してしまった流星体を検出することを目的に、上弦の月の観測時間が長いオーストラリアで長期間の観測を実施します。日本でも、電気通信大学の日本観測チームや長野工業高等専門学校の観測チームがオーストラリア観測チームと同時観測を狙います。オーストラリアと日本との同時観測の協力を呼びかけています。
http://www.ice.uec.ac.jp/yanagi/Japanese/ImpactFlash/2004Leonids.html
この観測に合わせて、日本における観測キャンペーンを次のように設定しました。
〜コアタイム〜
この観測キャンペーンは、観測の科学的な意義が強いもの、すなわち、ダスト・トレイル理論による流星の予報がなされているダスト・トレイルの月への最接近時刻の前後1時間程度をコアタイムとしました。
しし座流星群の流星体の衝突可能部分(柳澤研究室のウェブページより)
図に、この期間の日本時間18:00での、月の日照部分(黄色)、しし座流星体の衝突可能部分(白)を示めします。いずれも上方が天の北、左方が天の東です。
2004年のしし座流星群の予報として、主に3人によってなされています。
キャンペーン観測は、主に、佐藤幹哉さんの(1)2004年のしし座流星群の予報、(2)月へ接近するダスト・トレイルの計算を元にしています。
表は佐藤幹哉さんによる1001年放出以外のダスト・トレイルの計算結果です。月に0.003AU以内に近づくもののみピックアップしてあります。
1001年放出以外のダスト・トレイルの佐藤幹哉さんによる計算結果
放出速度は[m/s]、太陽黄経は月におけるもの、Δrは月とトレイルとの接近距離[AU]で、+はトレイルが月の外側(太陽と逆側)です。fM値はトレイルの引き延ばされ具合を示す目安で、小さいものほど引き延ばされ、薄くなっていると考えられます。
佐藤幹哉さんのコメントと合わせて考えると、以下のようになります。
以上を考えて、よりチャレンジングな観測キャンペーン時間帯として、次の時間帯での集中的な観測を期待する。これらの時間帯は、佐藤幹哉氏が計算したダスト・トレイルの位置をもとに大西(長野高専)と柳澤(電通大)が設定した。ダスト・トレイル理論に従えば、いずれも検出の可能性はあまり高くない。
しし座流星群の流星体による月面衝突発光観測のキャンペーンや観測法については、電通大の柳澤研究室のウェブページを参考にしてください。
最後に、しし座流星群の月面衝突発光観測キャンペーンの連絡先ですが、国内観測のことについては、大西浩次(ohnishi@ge.nagano-nct.ac.jp)が担当します。
〒381-8550 長野市徳間716
長野工業高等専門学校一般科
また、観測結果や解析について等は柳澤正久(yanagi@ice.uec.ac.jp)までご連絡ください。
〒182−8585 東京都調布市調布ヶ丘 1-5-1
電気通信大学・情報通信工学科
補足:今年、2004年のしし座流星群の予報がいくつか出ています。その予報の中で、大変興味深いものが、今から1000年以上前の1001年の回帰のときに作られたダスト・トレイルによる流星が11月9日の朝に観測できるかもしれないという予報です。
ヴォーベロンさんほかの予報によれば、2004年 11月8日 23:30 (UT)に、ZHR 50(100?)の出現を予報していました。日本時では11月9日の午前8時30分ということで、残念ながら日の出後の現象ですから、実際に流星を目で見る事は難しいと考えられました。しかし、暫定ながら日本でのTV流星観測者により、早朝に1001年ダスト・トレイルによると思われる流星を検出しています。一方、電波観測では好条件の観測時間帯であり、1001年ダスト・トレイルによる活動が検出されると期待していましたが、現段階では優位な検出はありません。
さて、日本の佐藤幹哉さんも1001年ダスト・トレイルの予報を出しています。さらに、彼によって月への接近も計算されています。当日は月齢25の月です。ちょうど、地球より先に約2時間前に月にダスト・トレイルが接近します。佐藤幹哉さんの計算では、放出速度が49.51m/sのダスト・トレイルが午前6時30分に、放出速度が47.50m/sのダスト・トレイルが午前7時17分に月に最接近します。長野高専と電通大は、今後のしし座流星群の月面衝突発光観測のリハーサルとして、11月9日の早朝午前4:30から6:00(日本時間)まで月面衝突発光の観測を行いました。この結果はいずれ連絡します。