Part-4 冬型の気圧配置になった場合


 この時期もっとも多いのがこの西高東低の冬型の気圧配置になる場合です。天気図では等圧線が南北に並び、ひまわりの画像では日本海に筋状の雲が並んでいるときがこの冬型の気圧配置のときです。

 この場合、天気の傾向はハッキリしていて、太平洋側は冬晴れの乾燥した晴天、日本海側は雪や雨の悪天となります。

 この傾向は、この気圧配置のときだけを集めてその雲量分布を合成した下図にもハッキリ出ています。日本海側ではその多くの地域で平均雲量8以上という状況です。冬型になった場合、日本海側で今回の皆既月食を見るのはかなり厳しいと言わざろうえません。南西諸島もほぼ同様です。

 逆に太平洋側の人はラッキーで、冬型になった場合はまず月食を楽しむことができるでしょう。前に書いた、高い山脈によって北西からの季節風がブロックされる平野部が晴れやすい傾向は、この冬型のときの傾向です。ただ、冬型がひじょうに強い場合には、晴れと雪の境界線がより風下側(南西側)に移る場合もありますので、この点には注意が必要です。

 また、山脈が途切れて季節風が侵入してくる場所では、太平洋側でもあまり天気は良くありません。また、冬型の場合は山岳部よりも平野部の方が晴れることは多いでしょう。

 

冬型の天気図の例

● 冬型の気圧配置のときの天気図の例

 日本列島の西側に高気圧、東側に低気圧があり、日本の上では等圧線が南北に並んでいるのがこの冬型の気圧配置のときの特徴だ。この気圧配置になると、日本付近では大陸からの冷たい北西季節風が吹き、日本海側で雪や雨、太平洋側は晴天になることが多い。
 過去60年の統計では、皆既月食の日にこの冬型の気圧配置になる確率は37%。

冬型の気圧配置のときの雲量合成図 ● 冬型の気圧配置のときの雲量分布の合成図

 過去40年間で1月10日が冬型の気圧配置になった年17例を集め、同日9時の雲量分布を合成した。雲量が少なく天気のよいところほど暖色に、逆に雲量が多く天気の悪いところほど寒色になるように配色してある。
 冬型の気圧配置になる日のみを取り出してみると、太平洋側と日本海側とで天気が大きく違うことがいっそうハッキリする。冬型になった場合、月食を見るなら太平洋側だ。

 

1999年1月10日9時の雲画像 1999年1月10日9時の雲量分布
   

● 冬型の気圧配置のときの雲画像(右)と雲量分布図(左)
 皆既月食が起こる日のちょうど2年前、1999年1月10日は冬型の気圧であったので、この日9時の気象衛星ひまわりによる雲画像と、地上の気象官署で観測された雲量分布の図を並べてみた。
 衛星画像からは季節風に運ばれてきた日本海の雪雲が日本の寂寥山脈によってブロックされ、その風下側が晴れていることがよくわかる。その晴天域と雲量分布図で雲量の少ない赤い部分はよく一致している。

雲画像はすべて、東京大学生産技術研究所高木研究室の Satellite Image Archive for Network より。

 

● まとめ: 冬型の場合
・ 太平洋側で晴れる。
・ 日本海側は悪天。

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