Part-5 低気圧が通過する気圧配置の場合


 この時期2番目に確率が高いのが、この気圧の谷(低気圧通過)の気圧配置になる場合です。天気図では日本の上やすぐ近くに低気圧があって、天気は全国的に悪くなります。

 この気圧配置の場合のみを集めた合成図では、日本のほとんどの地域が平均雲量6以上になっていて、全国的に月食を楽しむことは難しい状況です。

 

気圧の谷(低気圧通過)のときの天気図の例

● 気圧の谷(低気圧通過)のときの天気図の例

 日本列島の上やすぐ近くに低気圧があるときが、この気圧配置。この場合は基本的に晴れないが、部分的に雲の切れる場合がある。この部分的な晴天域の動きをいかに読みきるかが、この気圧配置の場合のポイントとなる。
 過去60年の統計では、皆既月食の日に気圧の谷の気圧配置になる確率は28%。

気圧の谷(低気圧通過)のとき雲量分布の合成図 ● 気圧の谷(低気圧通過)のとき雲量分布の合成図

 月食の日、1月10日が気圧の谷の気圧配置になったことは、過去40年間では11回。このときの朝9時の雲量分布を合成したのが右の図だ。日本のほとんどの地域が雲量6以上となっていて、低気圧が通過するときはやはり全国的に天気が悪いことがわかる。

 

 それでは、低気圧がやってきたときは月食観望はあきらめるしかないのでしょうか?

 ここで実例をひとつ紹介しましょう。下の図は月食が起こるちょうど1年前の2000年1月10日9時の雲画像とそのときの地上観測によるでの雲量分布の図です。このときも日本の上を低気圧が通過中で、日本の陸地のほとんどは雲に覆われていました。しかし、太平洋岸や内陸部にわずかですが晴れている場所も存在します。

 これらの晴天域は、低気圧の進行にともなって移動します。したがって、低気圧が来た場合は、ひまわりの雲画像の動きをよく読んで、月食の時間にどこが晴天域がなるかを見きわめることが大事です。その際には、単に晴天域を平行移動するだけでなく、天気図に書かれた高気圧低気圧の移動方向と移動速度、そしてそれらが発達傾向であるか消滅傾向であるかの情報を加味します。

 

2000年1月10日9時の雲画像 2000年1月10日9時の雲量分布
   

● 気圧の谷(低気圧通過)ときの雲画像(左)と雲量分布図(右)
 皆既月食が起こる日のちょうど1年前、2000年1月10日は気圧の谷の気圧であったので、このときの気象衛星ひまわりによる雲画像と、地上の気象官署で観測された雲量分布を並べてみた。
 低気圧通過中だけあって雲量分布図は全国的に紫色の雲量9以上になっている。しかしそれでも、太平洋岸の浜松−尾鷲−潮岬と高知−延岡−都城−種子島にかけて、萩−下関、軽井沢、さらに沖縄などの地域に雲量5以下の晴天域がある。

 低気圧の中で雲の切れ間ができやすいのは、低気圧の西側だ。低気圧が発達してくるほど、この西側の晴天域はハッキリしてくる。このとき浜松以西の太平洋岸が晴れたのも、この低気圧の西側の晴天域に入ったためである。また、低気圧の南側にも雲の切れ間がある場合がある。
 しかし、これらの晴天域の有無は個々のケースによって違ってくるので、そのときどきの雲画像で晴天域の位置を確認した方がよい。

雲画像はすべて、東京大学生産技術研究所高木研究室の Satellite Image Archive for Network より。

 

 また近年、月食の日の1日前、1月9日前後には毎年のように日本のどこかで大雪が降っています。96年には九州から山陰地方、97年には山陰から中部地方、98年には関東、99年には北陸地方を中心に大雪が降っています。98年に東京で15cm以上雪が積もったことを覚えていらっしゃる方もいらっしゃるでしょう。
 このように大雪が降りやすい時期でもありますので、気圧の谷の気圧配置になった場合は、雪に充分注意しましょう。
 2001年も1月7日の晩から8日にかけて東京で初雪が降り都心で1cmの積雪になりました。

 

● まとめ: 低気圧の場合
・ 基本的には晴れない。
・ 部分的に雲の切れ間ができることがある。
→ 雲画像の動きを読んで、月食の時間に晴れるところを探す。

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