【1997年10月30日 国立天文台・天文ニュース】
「しし座流星群」は「しし座」を放射点にして、 11月中旬に数多くの流星を降らせる流星群で、 過去に何回も大出現を見せたことでも有名です。 中でも、1799年、1833年の流星出現は歴史的にも特筆されるもので、 肉眼で見えた流星数が、1時間当たり数万から数10万個にもなったと伝えられています。
この流星群はほぼ33年を周期として出現数が増減を繰り返すことが知られています。 しかし33年ごとのピークの年になっても、 必ず上記のような何万個もの流星が見られるとは限らず、 1時間当たり数100個の出現にとどまる場合もあります。 特に、期待された1899年、1932年のピークには出現数が予想をかなり下回ったため、 人々の落胆は大きく、「流星群は衰えて、 もはや昔のような大出現は見られない」とさえいわれました。 それにもかかわらず、1966年11月17日には、アメリカ西部で、 思いがけない大出現がとらえられ、1時間当たり数万個の流星が観測されました。 「しし座流星群」は決して衰えたわけではなかったのです。 そして、次回の出現が期待されました。
その「しし座流星群」のつぎのピークは1998年、あるいは1999年と考えられ、 もう目前に迫っています。 この流星群の粒子をひき連れた母彗星のテンペル・タットル彗星は 今年の3月に検出され(天文ニュース90参照)、順調に太陽に近づいています。 近日点通過は1998年2月27日の予定です。その接近につれて、3年ほど前から、 「しし座流星群」の活動はしだいに活発になってきています。 昨年も一昨年も、明るい流星がいくつも観測されているのです。 ピークの年が近づいているので、今年も間違いなく流星が見られることでしょう。
日本では、今年は、11月18日の0時から夜明けまでが流星出現のヤマと思われます。 「しし座」の放射点が東の地平線から昇ってくるのが0時少し前ですから、 それより早い時間帯には「しし座流星群」の流星を見ることはできません。 また、夜が明けて明るくなってしまえば、もちろん流星を見ることはできません。 したがって、観測できるのは、必然的にこの時間帯になります。
メースン(Mason,John W.)の予測によると、 今年もっとも条件がよいのは北太平洋地域で、 1時間当たり1000個程度の流星出現が期待できるとのことです。 しかし、日本では、地域が少しずれている上に月令18の月が明るすぎて 暗い流星が観測できないので、たとえ予想通りの出現があったとしても、 観測できるのはその数分の一から1割程度になってしまうことでしょう。 それでも、来年の出現を占うためにも、今年の11月17日、18日、19日には、 夜明け前の空を眺めてみたらどうでしょうか。 きっと、月明の中に、明るい流星がいくつか見えるに違いありません。
来年の1998年は日本の観測条件が非常によく、月も見えませんから、 11月18日の夜明け前には1時間あたり5000個ぐらいの流星が見える可能性も あるということです。 今年にしても、来年にしても、流星出現数を確実に予想することはできませんが、 めったにない機会が近づいていることは確かです。 見落として、あとで悔やむことがないように、 前もって申し上げておくことにします。
参照 Mason,J.W., J.Br.Astro.Assoc. 105,p.219-235(1995).
1997年10月30日 国立天文台・広報普及室