ステラナビゲータ(Ver.6)で再現「カノープスを見る」
はじめに
寒い季節がやってきましたが、冬の名物といえば南極老人星「カノープス」を忘れるわけにはいきません。冬の大三角の下の方、地平線(水平線)近くに赤く輝く星を再現してみましょう。
東京でカノープスを見る
まずは、東京でカノープスを見てみましょう。
ツールバーの (場所)ボタンをクリックして「場所」ダイアログで東京に設定します(fig1)。
次に、(日時)ボタンをクリックして「日時」ダイアログで2004年2月14日20時30分に設定します(fig2)。
ここでステラの星図を見て、真南の地平線近くに輝いている星がカノープスです。
さて、このカノープスはシリウスに次いで全天で2番目に明るい星なのですが、それが明るく輝く姿は南方に行かなければ見ることができません。そこで、場所の設定を南に移動してみましょう。
ここでもう一度「場所」ダイアログボックスを表示して、[緯度]の度の単位のスピンボタン(▼)を押して、緯度を減らしていきます。
地図の表示が徐々に南に移動していきます。するとカノープスの高度が高くなり、明るさも増して、赤みがなくなっていくのがわかるでしょう(fig3)。反対に緯度を増やしていくと、カノープスの高度は低くなり、最後には地平線下に隠れてしまいます(fig4)。
大気による浮き上がり現象
カノープスの高度が低くなればなるほど、明るさが減っていきますが、もうひとつ、目に見えにくい現象もおきています。それは「大気による浮き上がり現象(大気差)」といい、地平線近くの天体が実際の高度よりも高く見えるという現象です(fig5)。
ステラナビゲータver.6では、この「大気による浮き上がり現象」も忠実にシミュレーションしているので、「カノープスの再現」も実際の見え方に忠実な、完璧なものになっています。たとえば、場所を再び東京に戻して、どのくらい浮き上がって見えるのか確認してみましょう。
[設定]メニューの[表示形式]で、ダイアログを表示します。
このダイアログで[大気差補正]とあるのが、「大気の浮き上がり現象」を再現するかどうかのオプションです。これにチェックを入れると天体が浮き上がって見えます(fig6)。
[大気差補正]のチェックを外して、[OK]ボタンを押します。するとカノープスの位置が低くなるのがわかります(fig6)。
どのくらい浮き上がって見えるのか、その数値的な確認をしたい場合には、高度の値を比較してみましょう。
カノープスをクリックすると「天体情報パレット」が表示されます。もしここに方位・高度が表示されていない場合は、天体情報パレットの(設定)ボタンを押して「天体情報パレット設定」ダイアログを表示させ、[表示オプション]の中にある[方位、高度]のチェックをオンにします(fig7,8)。
東京では、カノープスの南中高度が約2度、このときの大気による浮き上がりは約20分角ほどになります。これは月の見かけの大きさに近く、この現象により、いかに天体が浮き上がってみえるかがわかります。
またここで緯度を変えて、高度の違いによる大気による浮き上がりぐあいの違いを比較してみれば、地平線に近いほど浮き上がりが大きくなることがわかります。さらに、高度が低いところだけでなく、高度の高いところでも、わずかながらも浮き上がって見えることを確認することができます。
つぶれて沈む太陽
この大気による浮き上がり現象は、星だけでなく、面積のある太陽や月の見え方にも大きく影響しています。さっそく再現してみましょう。
まずは、場所は東京のままで、時間を17時10分にします。
次に太陽を拡大して、追尾しながらそのようすを観察しましょう。(検索ツールバー)に「太陽」または「SUN」と入力して検索ボタンを押すと、太陽が画面の中心に表示されます。
太陽をクリックして天体情報パレットを表示させ、天体情報パレットの(中央に固定)ボタンを押すと太陽の追尾設定になります。
太陽を拡大するために、(範囲選択)で、表示範囲を2度に設定します。もちろん[大気差補正]はオンにしておきます(fig9)。
ここで時間を少しずつ進めていくと、太陽がしだいに上下にひしゃげてくるのがわかります。これは、高度による浮き上がり度の違いのため起きたもので、太陽の下側部分の浮き上がりかたが上側より大きいため、結果として上下につぶれているように見えるわけです(fig10)。[大気差補正]のオン・オフを切り替えて、違いを確かめてみましょう。
月も同じ現象がおきているので確かめてみるとよいでしょう(fig11)。