- Univ of Illinois
- ペーパーバック、112ページ
- ISBN 978-0-252-06227-8
- 価格 2,912円
- ※洋書の価格は為替相場に応じて変動します。ご了承ください。
2009年は、ガリレオが望遠鏡を天体に向けて400周年の世界天文年であると同時に、アポロ11号の月面着陸から40周年でもあった。V2やサターン5型の立役者フォン・ブラウンが一途にロケット開発を目指したのは、ロンドン攻撃のためでも、月開発のためでもない。それは火星への旅行のためであった。
本書の初版は1952年のドイツ語版である。アメリカのイリノイ大学が翌年すぐに英語訳を出版し、62年に再版、91年に再々版した。評者が入手したのは、91年のペーパーバッグ版であり、アポロ40周年のフェアを行っていた洋書店であった。本書は宇宙開発史において知る人ぞ知る有名で重要な本であり、それが今でも入手可能なのだ。
フォン・ブラウンに関する記事は、評者もこれまでに佐貫亦男氏の「宇宙への野望:フォン・ブラウンその栄光と挫折」(同書中にも本書の紹介がある)などで読ませてもらったが、自書論文を直接読んだのは初めてだ。佐貫先生が超人間と評したフォン・ブラウンの優秀さを、まのあたりに理解することができた。
本書は表だらけ。いかにもドイツ人工学者らしく、記号や数式を一つ一つ几帳面に説明し省略がない。それを丁寧に追って行けば、少なくとも頭の中ではロケットを飛ばすことができそうだ、従って、工学部宇宙工学科や航空工学科の方が読むのが最適だろうとは思うが、評者のような宇宙開発を普及させる人間も、読んでいて非常に啓蒙される本だ。
特に有人火星往還の具体案の説明は、基本的には今でも十分に通用することが記されている。宇宙開発に関心を持たれる方は、ぜひこの歴史的名著をお読みいただきたい。