- 岩波書店
- B6判、122ページ
- ISBN 978-4-00-007487-2
- 価格 1,365円
121ページの小冊子だが、凝縮された内容は価格以上の価値がある。理系向けだが、興味を持つ人なら一気読みができる。宇宙生命発生の研究で有名なオパーリン率いるメリーランド大学で揉まれ、横浜国立大学工学部教授として日本における「生命の起源」研究の中心学者である著者が、アストロバイオロジーについて、その現状をやさしく語っているのが本書である。パスツールの「白鳥の首」実験を導入として、隕石や彗星・火星の人工衛星や探査車等による探査史と現状・未来展望、特に木星の衛星エウロパや土星の衛星タイタンの探査に関する期待とその課題を、生物学的手法には不慣れな天文関係者のためにほとんど化学式も使わずにわかりやすく説明されている。海底熱噴水孔の具体的な説明について、評者は本書以外にほとんど読んだことが無く、なるほどと感心するばかりだった。そして、やたらに表面の氷に穴をあけて探査すると、ボーリング機からその天体に元来居なかった生命体による汚染が生じる危険性についても、評者は本書で知った。これもなるほど!だった。
冒頭から読むのが筋かも知れないが、人によっては最終章(8章)「生命の〈起源〉と〈未来〉」と、あとがきから先読みし、将来の展望を知った上で、1章から7章までを読むとよいかも知れない。ともかく、天文学もバイオロジーが語れる時代になったのだ。