- 講談社
- 新書判、198ページ
- ISBN 978-4-06-288011-4
- 価格 987円
評者は、野本陽代氏の主な著作7冊全てを購入している。ハッブル宇宙望遠鏡(HST)関連が多い。始めは評者のようなガチガチ天文人にない、女性らしい感性の豊かな文学的天文学の見方を学びたかったためだが、やがて、HSTの映像案内者としての文章に感心するようになった。知性と探究心が見事に花開いたのは、おそらくご主人の野本憲一さんの薫陶によるのだろう。
他の著者が執筆したHST(特にその映像)解説本は、バッタリ購入しなくなった。どれも似たり寄ったりだったからである。だが本書を新聞朝刊の広告で知ったときは、野本氏を信じて近所の書店に走り、第1章「ハッブル宇宙望遠鏡の栄光と苦難」、第6章「ハッブルの今後と次世代望遠鏡」を立ち読みし(本屋さんごめんなさい)、購入を決めた。この2つの章は本書の神髄であり、まずはここからお読みいただきたい。最近の類書に欠如している要素が記されている点を評価したい。もちろん間にある4つの章も、HSTの最新画像とその成果を、余すところなく解説していることは申し上げるまでもない。
現代観測天文学を語り、人間の限りない知識欲に思いを致すなら、本書をご覧になることを、評者は心よりお勧めしたい。