- 新潮社
- 新書判、203ページ
- ISBN4-10610207-2
- 価格 714円
最近、洋書店の物理本コーナーがホーキングとアインシュタインの研究書で、たわわだ。それにくらべ、わが国の出版界は…。それでも優に800冊は出版されているという中で、本書成功の理由は、一にも二にも著者がアインシュタインの熱狂的ファンだからだ。その思いが見事ににじみ出て、工学博士らしくいくばくかの数式はあるにしてもたくみな説明で、読者にその気にさせるのだ。「あっ、解った。もっと勉強してみよう」と思うはず。評者は刊行日にして読み上げた。
のっけの「アインシュタインは偉い」章で、まず小手払い。続く「おさらい」章で時空間と運動についてがっちり復習し、その後の数章でアインシュタインと相対性理論がわかるという仕掛けは、ごくごく自然で作戦上手。著者も認める「空間の歪み理解」の困難さを、こんな小冊子でその気にさせたのは、評者には想定できなかった。起承転結の結は「想像力は知識よりも重要である」などのアインシュタイン名言集。この本、役に立ちますよ!
なお、全篇を通じ繰り返し著者が伝えてくれている「光速度不変を認めれば相対論が全てわかる」というメッセージは、きわめて貴重なもの。評者は著者に心より感謝したい。