- 日本放送出版協会
- B6判、213ページ
- 2010年1月
- ISBN 978-4140911495
- 価格 1,019円
「世界天文年」の2009年、月や日食、太陽系、星座の普及書はこの書評でご案内に困るほどは多数出版された。だが、今後の地球をエネルギー的に考えるための肝心かなめな「太陽」についての本は、我が日本の出版界にはほんとに少ない。良い本が出版されたと評者は嬉しく思っている。
太陽はもっとも近所にある恒星である。近いがために、その表面が月面のように良くわかる。カラーグラビアの多数の太陽写真は、太陽内部の回転速度図、磁場構造図、磁気リコネクション、コロナ質量放出、フレアのX線像、太陽風の速度分布など、いずれもゾクゾクするものばかりだ。一方、原始星から放出されるジェットの写真などと比較して見ると、いよいよ太陽が恒星に見えてくる。
評者はもう40年以上も前になってしまった学生時代、表面温度6000度に対してコロナの温度が100万度なのは何故かと、恩師鈴木敬信先生との1対1の授業(学部で、ですよ。なんと幸せだったことよ。ただし当時は睡眠時間もなく辛い!の一言だった)で逆質問されて困り果てた。当たり前のことで、先生も困っていたのだ!本書によると、今でも解決してはいないというが、「磁気リコネクション」という現象がその説明になる可能性を本書は丁寧に説明してくれた。磁気リコネクションという用語を評者は本書で初めて知った。これをきっかけに太陽物理学をちゃんと勉強しよう。
本書第4章「爆発だらけの宇宙」は、きわめて面白い。クエーサー、活動銀河中心核(ブラックホール)ジェット、原始星ジェット、近接連星ジェット、太陽ジェット、超新星爆発、ガンマ線バーストなどなど、いまや恒星物理学はジェット無しでは語れないと柴田先生はおっしゃる。
さらにまた、終章の「我々はどこから来たか」も非常に勉強になる。太陽超巨大フレアが恐竜を絶滅させ哺乳類の天下になったという主張は一聴に値する。これからのご研究に期待しよう!