- 誠文堂新光社
- A5判、167ページ
- ISBN 978-4-416-20917-2
- 価格 2,310円
変光星観測は日本での人気はいまいちだ。日食病にかかった人々の圧倒的熱狂は別としても、コメットハンティング、流星・惑星・星食観測に負けている。その理由は、指導書がなかったことに尽きる。かつては、下保先生や鈴木先生などの名著があった。だがそれも今は昔、古書店でしか入手できない。評者はレビー氏やホフマイスター氏などの洋書に頼っている。
評者が思うに、緒外国ではAAVSO(全米変光星観測者協会)を筆頭に多数の会員であふれ返る変光星界が、我が国では閑散としているのは、変光星が天体物理学のスターであるからだ。つまり、他の観測には対象天体にそれほど幅がないのに対して、変光星はバラエティーに富み、天体物理学のあらゆる場面に登場するのだ。ゆえに、日本のアマチュアにとっては理論が難しい。もしあなたが科学することを七面倒くさいと思われるなら、変光星はやめておいたほうがよい。だが逆に、観測し、原因を考え、理論と観測データのギャップを究明することに異常なほど興味をお感じになるなら、変光星観測は絶対にやっていただきたい。一回測光するごとに充足感を深く味わうえる点では、他の天体観測に決して負けないし、多分上回りさえするはずだ。
本書は、日本変光星研究会のベスト・スターたちが、それぞれの守備範囲ごとに守りを固め、徹底的にそのノウハウを明かしたすごい本である。残念なことに、多くの書店では、星空フェアを飾る宇宙論・星座の本の片隅にひっそりと隠されているのを見かけるが、そんな不遇な状態に甘んじる程度の本ではない。
評者も変光星観測者の端くれ。本書を読んで、多くの方が変光星観測の楽しさや重要性を理解し、ベスト・スターたちのあとを継ぐことを期待したい。