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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

ガリレオがひらいた宇宙のとびら

表紙写真

  • 渡部潤一 著
  • 旬報社
  • 四六判、203ページ
  • ISBN 978-4-8451-1098-8
  • 価格 1,575円

著者の渡部氏が世界天文年を記念…と言うより、その広報活動の一端を担う立場(国立天文台天文情報センター長)から書かれたというべき本。望遠鏡と言う近代天文学最強の武器を人類史上初めて駆使し、まさしく宇宙の扉を開いたガリレオの業績を、子どもでもわかるやさしい表現で説明した高レベルの普及書である。著者が中学生のころに描いた木星・土星のスケッチも掲載され、往時がしのばれてとても楽しい。

これまでどちらかというと実験物理学者と見なされていたガリレオだが、世界天文年の今年は天文学者というイメージが定着した。本書からは、いかに近代天文学がガリレオの望遠鏡で始まったかが良くわかる。望遠鏡無くして近代天文学は語れない。彼の手先が器用で、実験科学者だったからこそ、また論争好きで好奇心旺盛(ジャーナリスト的?)だったからこそ、望遠鏡による観測天文学が発展したのだ。

ある意味では、本書の最も重要な点、すなわち筆者の視点が語られているのは、ガリレオの業績やその影響が具体的に描かれている本文よりも、あとがきにあると評者は見ている。すなわち、人類がいる場所が宇宙の中心ではないことや、生物界でも人類は中心にいないことなど,科学の進歩が人間の自己中心的世界観を、時間的・空間的に客観的世界観に変換させていくのだという著者の主張は、混沌とした現代世界だからこそ耳を傾ける価値があると、評者は思うのだ。

でも著者は、そんな哲学的なことを読者に考えさせようとは意図していないだろう。ガリレオの驚きを、ぜひみなさんに体験して欲しいというのが重要なメッセージであるはずだ。ともかく世界天文年をきっかけに、一般の人々が星や宇宙について少しでも話題にしてもらえるような雰囲気を、本書は十分にかもし出している。ガリレオの天文学上の業績を網羅した本として、2009年を代表する一冊だ。

世界天文年2009日本委員会公認書籍の新刊。ガリレオ以前、ガリレオの時代、そしてガリレオ以降の3つの時代に分けて、天文学発展の歴史をたどる。ガリレオ以前とは天動説から地動説へ宇宙観が転換する時代。ガリレオ以降は大望遠鏡時代からビッグバン宇宙論の時代と言いかえてもいいだろう。そして、ガリレオが光景4〜5センチ、倍率20倍程度の望遠鏡で数々の発見をした時代は、私たちが小さな望遠鏡で追体験できる。本書は歴史解説にとどまらず、木星のガリレオ衛星や月のクレーターなどの見え方も詳しく解説し、読者に実際に見てみようと呼びかける。著者が中学生に描いたという土星や木星のスケッチが、読者との距離をぐっと縮めてくれる。

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