メガスターデイズ 〜大平貴之の天空工房〜

第7回 手塚治虫の世界その3

星ナビ2005年7月号に掲載)

昨年の12月の中ごろだっただろうか。手塚治虫のコスモゾーンシアターの制作発表が名古屋のホテルで開催された。そのときに初めて出会ったのが故・手塚治虫氏の長女である手塚るみ子さんだった。るみ子さんは、今回のコスモゾーンシアターのナレーションを務めることになったのだ。

ミーティングで同席して、わりとおとなしい方だなと思ったのだが、その後声をかけてくださった。自分がやっているラジオのレギュラー番組に出ませんかというお誘いだった。コスモゾーンシアターの立ち上げの修羅場にぶつかりそうな日程だったが、初対面の僕のことを気にかけてもらったのが嬉しかったし、イベントのPRにもなるので、ふたつ返事で引き受けることにした。

収録の日、僕は今回のイベントで、自分たちがいかに手塚治虫という人物の影響を強く受けていたかを再発見できたことを話した。手塚治虫の影響。それは今の僕らにとってある意味空気のようで、日常忘れがちになるけれど、限りなく重要な存在だ。機械文明の持つ危険性や環境破壊に強い危機感を持ち警鐘を鳴らしながら、一方で科学技術の明るい未来を信じて疑わない。その象徴が鉄腕アトムなどの手塚キャラたちだ。それは、僕ら日本人全員の心の底流に、大きな存在となって今も流れている。

手塚るみ子さんとそんな話をしていたのだが、おかしかったのは、手塚治虫氏のエピソード。世間では言わずとしれた偉大な漫画家の手塚治虫氏だが、家庭ではちょっと違った一面を見せていたようだ。娘としての視点で見てきた彼女の言葉を聴いていると、雲の上のはずの手塚治虫氏がとても親近感をもって感じられるのがおもしろい。手塚氏はとにかく時間がなくて、寝る時間もなく、昼夜を問わずばたばたと仕事をしていたそうだ。実は、僕はこの収録の前後に予定が詰まり、前の予定が遅れてしまったこともあって、スタジオに駆け込んで息が収まる間もなく収録に臨んだわけだけど、そんな僕に生前のばたばたした父親の姿が重なったそうだ。「まるで漫画家みたいですね」と半ば呆れ顔で言われてしまったものの、僕にしてみれば、かの手塚治虫氏に例えて見てもらえた光栄にまんざらでもないのだった。

手塚るみ子さん

僕が出演させてもらったのは、手塚るみ子さんがパーソナリティを務めている番組「Earth Dreaming」。毎週日曜日23時30分〜24時に、朝日放送の関西地区のAMラジオで放送している。僕の出演した回は4月3日と10日に放送された。

収録

なんと2週連続で出演することになり、スタジオで一気に2回分の収録をこなしたのだけれども、手塚さんとのかけあいですっかり時間を忘れて、予定時間を一時間近くもオーバーしてしまったほど。

手塚るみ子さんと二人で

写真提供/ABCラジオ 「Earth Dreaming〜ガラスの地球を救え〜」
http://www.asahi.co.jp/50th/radio_dreaming.html