第10回 ついに発売! ホームスター 反響続々
(星ナビ2005年10月号に掲載)
発売の日
ついにホームスターが発売された。様々な事情があって延期を重ねた末になってしまったけれど、とにかく僕が開発した商品が世に出た記念すべき日だ。
思えば、4月に発表してからインターネットやマスメディアで情報が広がり、予約注文が殺到するなど、大きな反響に驚いた。ホームスターの星空の再現力には自信はあったし、反響は嬉しいことには違いなかったが、不安もあった。誰も現物を見ていない段階での下馬評。お金を払って買ったお客さんが実物を見て、満足してくれるだろうか。お客さんの期待するものと、ホームスターが提供できるものは一致しているだろうか。そんな不安もあったのだ。
8月13日、ついに世に問う日が来た。早速購入してくれた人の感想の声が、ネットなどを通じて入ってきた。「買ってよかった」「星が思ったよりきれいだ」。おしなべて好評のようだ。それでやっと、よい商品を生み出すことができたと実感することができたのだ。
ホームスターの特長
家庭で本格的な星空が楽しめるのがホームスターの最大の特長だが、ポイントはそれだけではない。重要なのは恒星原板が交換できるようになっていることだ。この特長は、実は家庭用はおろか、メガスターも含むいかなる業務用プラネタリウムにもない、ホームスターならではの特長である。恒星原板ソフトを差し替えればさまざまな仕様のプラネタリウムに変貌する。標準の付属品でも、全天に星座線入りのものとそうでないものを選ぶことができるし(実は、大型プラネタリウムでも、全天に星座線を入れられる機種はごくわずかなのだ!)、将来的には南半球や星の色を反映させたカラー原板、星の数を目的に応じて増減させることもできるだろう。星以外のさまざまな画像を投影することも原理的に可能で、全く未知の用途が生まれるかもしれない。この柔軟性と拡張性の高さが、ホームスターの隠された特長だと思っている。
BUMP OF CHICKENとのライブ
メガスター?を公開している愛知万博ささしまサテライト会場「手塚治虫のコスモゾーンシアター」で、人気バンドの“BUMP OF CHICKEN”とメガスターのコラボレーションイベントが開催された。メガスターと音楽アーティストとの本格コラボは、昨年のKiroro以来。今回は500万個の星空を投影可能なメガスター?の最新機タイタンに、会場に設置されている大平オリジナルの全天周映像装置をフル活用しての、ひとまわりグレードアップしたハードウェアとの組み合わせだ。様々なプロジェクトを抱えてスケジュールがタイトな僕も、否でも応でも力が入った。BUMP OF CHICKEN側と議論の末、星空のもとでオーロラ、雪、地球や星座絵などの演出を取り混ぜたコラボレーションにすることが決まった。
オーロラや雪は、大平のオリジナルCGコンテンツで色々な場所で使ってきたが、今回は映像装置の解像度アップに加え、CG自体もクオリティを大幅に上げて作り直した。その結果、ドームに映った映像はこれまで行ってきたのとは格段の進歩を遂げた。特に手ごたえを感じたのが雪空だ。何万粒もの雪の粒子のひとつぶひとつぶの運動をコンピュータで計算し、ドーム全面に投影したのだ。リアルで包み込まれそうな雪空には、会場での評判もひときわ高かった。
そして当日。メガスターの操作は、オートを組まずにマニュアルでほとんどぶっつけ本番。そしてタイミングを見計らってこれも手動でCG映像を流す。歌にあわせてメガスターを操作する時、僕は不思議な感覚を覚えた。そう、彼らと一緒に「演奏」している感じがしたのだ。彼らはギターやドラムを演奏する。僕はメガスターを演奏する。出会って日が浅いのに、呼吸が合って僕らはひとつにつながった。最後の演出では、そのときの判断でメガスターを最高速でぶん回し、地球を脱出。全天周映像で地球を投影した。拍手喝采。僕も「演奏」しきれたという手ごたえを感じた。
最後にラジオの収録もあってメンバーたちと語り合った。メンバーの一人に加わった気分だったと話すと、4人も「そうだそうだ」と嬉しそうに言ってくれた。そして僕がメガスターをやっている喜び、まさに自分で作った楽器を演奏している感覚を、BUMP OF CHICKENのメンバーたちとしっかりと実感することができたのだった。
- “BUMP OF CHICKEN”公式ホームページ
- http://www.bumpofchicken.com/