メガスターデイズ 〜大平貴之の天空工房〜

第39回 スタッフにお任せの移動公演

星ナビ2008年4月号に掲載)

沖縄公演で改めて感じたこと

2月に入り、沖縄でメガスターIの公演があった。どんな公演でも、必ず初めて経験することがあるものだが、今回は初めてのことがいくつかある。ひとつは沖縄の訪問だ。2年ほど前に、テレビの取材で石垣島に行った時に飛行機で経由したのを除けば、沖縄本島を訪れるのは今回が初めて。観光目的ではないので、南国らしさを体験できることはあまり期待はしていなかったけれども、でも心ひそかに楽しみにしていた公演でもあった(同時に、仕事としては一抹の心配もあったわけだけれども)。

もうひとつは、スタッフに機器操作とオペレーションを事実上、完全に任せてしまったことだ。エアドームを使ったシステム一式の移動公演としては、初めてである。何しろ、エアドームもメガスターも、完成した当初は、当たり前ながら取り扱い方は僕しかわからない。だから僕が何もかもを仕切って、周りの人はそれを手伝うという形だった。だから僕がいないと何もかもが動かない状態だった。今回、公演に向けた機材の準備、発送から会場での設営、調整といった一連の業務は、すべてスタッフが行い、僕は設営が完了した会場に後で乗り込む形になった。1日遅れで現場入りした僕は、完璧に設営されたエアドームとメガスターを見て、ついにメガスターが僕なしでも完全に運用可能な状態に至ったことを実感したのだ。この意味は大きい。これからもメガスターの移動公演は続く。もちろん、僕はできる限り現場を見たいし、移動公演にも可能な限り参加していくことに変わりはない。けれども僕がいなくても実施できる状態か、そうでないかは、公演スケジューリング上、大きな違いがある。逆に言えば、公演が過密になっても、研究開発にもより神経を注げることにもなる。

さて、そんな沖縄公演は、実に盛況だった。内容は僕の生解説で、沖縄から南極までの星空を解説するという今までの流れに沿ったもの。それにしても観客が殺到し、毎回満員なのは嬉しいけれども、入れないお客さんからお叱りの声が多数あったのも確かだ。複雑な思いを抱えつつ、メガスターの集客について改めて感じたことがある。

それは、同じ上映内容であっても、イベント自体の企画や告知、会場といった周辺的な状況が、集客を決定的に左右することである。メガスターの移動公演でも、必ず満員御礼になるとは限らないからだ。

思うに、メガスター上映が、ある程度規模の大きなイベントの一環で行われていて(つまりもともと集客の素地があって)、その目玉企画としてメガスターが位置づけられている場合に客数が増加するケースが多い。場所自体の立地(交通アクセス)や告知が左右するのはもちろんである。逆に言えば、上映内容だけで集客できるわけではないということでもある。これは常設館でも当てはまることだと思う。

今後も移動公演は続く。メガスターを見たい人がたくさんいる。こういった経験を活かして、よりいっそう満足度の高い公演を目指したいと思ったのだった。