第53回 休載のお知らせ
(星ナビ2009年6月号に掲載)
残念ながら今回をもって、いったん休載させていただきます。
忙しさ、そして葛藤
50回以上にわたって続けてきたこの連載を、今回をもって一区切りとし、休載することになった。
休載や休刊というと、実質的には終了を意味することが多いと思うが、今回のこれは本当の意味での「お休み」である。復帰の具体的なスケジュールは決めていないが、しばらくのお休み、と理解してもらえると良いと思う。
休載については、ここしばらく考えていたことでもあった。最大の理由は、僕自身がますます多忙になり、原稿執筆に十分な余裕が取れなくなったことに尽きる。皆さんに読んでいただく記事はとてもクリエイティブなものだから、中途半端に取り組むというわけにはいかない。このコーナーは、メガスターを作り、上映する僕自身の考えていること、取り巻く日常などを皆さんに伝えるというのがコンセプトだが、今の僕は本業であるメガスター活動そのものにますます集中しなければならなくなっている。
メガスターは、これまでのプラネタリウムとしてのスタイルから、アート分野まで実に多くの分野にまたがることがひとつの特徴だが、現在その活動範囲はますます広がっている。その意味では本来伝えたいこと、伝えられるであろうことは今まで以上に増えている。けれども、そこにもうひとつの問題がある。元々は趣味であり、そして個人のフリーランスの活動であったメガスターが、今や小規模ながら企業化、事業化しているということである。
昼夜を通し、メガスターのことで頭がいっぱいになっている僕が書けることは、当然メガスター、つまり仕事のことばかり。しかしその内容について書くということは、裏を返せば、今や商品でもあるメガスターの広告宣伝と見られかねないという危険性も孕むようになってしまった。これはデリケートな問題である。天文やプラネタリウムと全く関係のない異業界の媒体であれば、メガスターづくしの話もさほど気にならなかったかもしれない。けれど天文雑誌ゆえの難しさというものがある。
僕はそのことに悩み、編集部とも相談を重ねてきた。もしも僕がメガスターの現場から少し離れ、人並みにさまざまな日常に目を配ることができ、ウィットに富んだ文面を披露することができたら、このような問題もなく、読者の皆さんにとっても興味のある連載にできたかもしれない。それが十分できないのは自分の偏った日常ゆえかもしれないけれど、それを悔やんでも今しばらくは仕方ない。
幸い、メガスターは僕ひとりで作る体制から、チームワークに移行しつつある。僕の近くでは頼もしいスタッフたちが、日々頑張ってくれている。この流れでいけば、僕自身にも余裕ができて、本来この連載で望まれるであろう、もっと幅広い内容の記事を書くことができるようになるはずだ。それまでの間、お休みをいただきたいというのが皆さんへのお願いである。
読んでくださった皆さん、どうもありがとう。次に僕がこの欄に戻ってくるときは、より幅広い話題でさまざまなことを書けるようにしたい。その日までしばしのお別れである。