木星大気運動のエネルギー源は木星内部から供給(続報)
【2000年2月15日 (Yahoo! News, 2000/2/9)】
新しくNatureに発表された論文によると、木星の嵐は地球のそれと似ているが、そのエネルギーは太陽からではなく木星内部から供給されているという。この研究は、カリフォルニア技術研究所のPeter GieraschらのチームとNASAのジェット推進研究所(JPL)の共同により、ガリレオ木星探査機の観測結果に基づいて行われた。 ( 速報・「木星気候を運行するエネルギーは、木星内部から供給」より)
太陽系最大の惑星である木星は地球とは異なり、その表層部の大部分は水素やヘリウムといったガスでできている。その化学組成は他の惑星とは異なり、太陽やその大気の組成と非常によく似ていることが分かっている。このことから、木星大気はその形成時の状態を保持し続けていると考えられ、太陽系形成の謎を解明するのに貴重な資料をもたらすことが期待されている。
木星のガス、すなわち大気の運動は、地球の大気変動のごとく活発な変化を見せることがわかっている。東西に走る数本の縞構造、巨大渦巻き、さらに小さな擾乱構造などが刻々とその形態を変えている。中でも大赤斑(上画像)は、短軸12,000km、長軸25,000kmの楕円形をしており、地球2個がまるまる入る巨大な構造である。これは木星の低気圧であることがわかっているが、約300年もの間、その形状をほとんど変えず、木星表面に見え続けている。地球ではこれほど長く継続する台風は存在しない。
地球の大気では、そのエネルギー源のほとんどが太陽からの光・熱でまかなわれている。適度な地球大気のお陰でその熱収支はバランスが保たれ、地上は適温に保たれている。しかし木星の大気の場合はどうだろう。太陽−木星間の距離とその面積を考慮すると、木星が受ける太陽エネルギー総量はざっと地球の4倍程度である。木星大気の大規模な運動を継続させるためのエネルギー源は他になければならない。それは木星内部の重力収縮による熱エネルギーと考えられている。これまでの観測から、木星の中心部から供給される熱エネルギー量は、木星が太陽から受けるエネルギー量の2倍以上に及んでいることがわかっていた。しかし、どのようなメカニズムで、またどのくらいのエネルギーが表層部に運ばれ、大気運動に影響をおよぼしているのか、詳細については明らかではなかった。
カリフォルニア技術研究所のPeter Gieraschらの研究チームは、木星探査機ガリレオが昨年5月に撮影した大赤斑付近に現れた2つの大きな嵐に注目した。この嵐の幅は4000km、深さは50km程度であるが、その形態変化は、大気の対流運動で発生する地球の台風ときわめて似ていることが明らかになった。そしてこの対流層こそが、木星においても重要なメカニズムとなっており、木星の東から西に流れるジェット気流の原動力となっていることを示したのである。
このことから、木星の台風のみならず、縞構造をも含めた木星大気の大循環は、木星内部の熱源によるクーリングの影響でつくられた対流が重要な影響を及ぼしていると考えられる。今後の木星大気研究にも議論をもたらすことになるだろう。
<関連ページ>
・Whipping up a storm on Jupiter (Nature science update Thursday 10 February 2000)