チャンドラが撮影したシリウス連星系
【2000年9月28日 CHANDRA Photo Album (2000.9.26)】
「おおいぬ座」の「シリウス」は地球からおよそ8.6光年の距離にあり、太陽を除くと全天で最も明るい恒星であるが、実は近接した2連星であることが知られる。ひじょうに近接している上、可視光で観測した場合、2連星のうち暗い方(シリウスB)は明るい方(シリウスA)に比べて1万分の1の明るさしかなく、2連星であることが確認されたのは1862年になってからだ。Alvan Clark氏が当時世界最高の望遠鏡のテストにおいて確認した。
画像は、チャンドラがX線で撮影したシリウス。1999年10月、チャンドラのテスト期間中の撮影。画像の視野は、横77秒角、縦62秒角(1秒角=1/3600度)。2つの光点が見られるが、この画像では暗い方がシリウスA、明るい方がシリウスBである。6つの方向に伸びる光芒は、チャンドラの光学系の支持構造の影響によるものだ。シリウスAは通常の恒星で、質量は太陽の2倍以上。シリウスBは表面温度2万5000度ほどの白色矮星(寿命を終えた低〜中質量の恒星の核の名残り)で、質量は太陽とほぼ同じだが、直径は地球の90%程度しかない超高密度の天体であり、シリウスB表面での重力は地球の40万倍にも達する。
シリウスBはごく低エネルギーの(つまり波長の長い)X線を放射しているが、X線を放射できる白色矮星はごく若いものだけだ。白色矮星は、恒星のエネルギー源である核融合反応の燃料となる水素を使い果たした死にゆく星であるため、形成直後は余熱で輝いているが、あとは徐々に冷え、輝きを失なってゆく。白色矮星がX線で観測可能な期間はひじょうに短く、観測は難しい。
しかし、白色矮星が通常の恒星と近接した連星をつくっている場合、若くない白色矮星からでもX線放射が観測できる。これは、白色矮星が恒星から放出されたガスを吸収する際、加速されたガスが数百万度にも熱せられ、強いX線を放射するためだ。
そして場合によっては、白色矮星表面に積もったガスがひじょうな高温かつ高密度に達した結果、白色矮星表面で核融合爆発が引き起こされることもある。そのとき、白色矮星の明るさは一気に1万倍にもなる。この現象は、新星アウトバースト現象と呼ばれる。
なお、白色矮星の理論は、S. Chandrasekhar氏――X線宇宙望遠鏡「チャンドラ(Chandra)」の名前の由来――により作り上げられた。
Credits: NASA / SAO / CXC