ハッブルがとらえた衝突銀河群「ステファンの五つ子」

【2000年10月27日 ESA Photo Release (2000.10.25)

ヨーロッパ宇宙機関(ESA)は、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)がとらえた「ステファンの五つ子」の画像を公開した。

HSTがとらえたステファンの五つ子

「ステファンの五つ子」は、5個の銀河(NGC7317, 7318A, 7318B, 7319, 7320)が密集した領域である。少し離れたところには、6つめの銀河NGC7320Cもある。これらは、ペガスス座の方向およそ2億7000万光年の距離に位置する。今回発表されたHSTの画像は、その中央部のみをとらえたクローズアップ画像で、NGC7319(画像中央)、NGC7320(画像下端)、NGC7318(画像右下、2つくっついているうち右側がA、左側がB)が写っている。この領域は、銀河間の相互作用を探る上で、きわめて興味深い領域である。

5つの密集した銀河のうち4つは、毎秒およそ6000キロメートルというほぼ同じ速度で私たちの太陽系を含む銀河系と遠ざかっているが、HSTの画像の下端に見られるNGC7320だけは毎秒およそ800キロメートルというずっと遅い速度で遠ざかっている。宇宙が膨張しているという理論に対立する科学者らは、この差は距離と赤方偏移に関連がないという証拠であるとする説も立てていたが、今ではNGC7320が密集した他の4つの銀河より3500光年ほど手前にある銀河であり、地球から見たときにたまたま同じ領域に見えているだけに過ぎないとする説が一般的となっていた。さらに今回のHSTの画像の特徴を分析した結果、その説は確定された。

ハッブルの画像の左上角のすぐ外にあるNGC7320Cは、かつて4つの銀河の密集点を背後から手間(地球から見た場合)につっきり、その際に多くのガスや星々をはぎとられて現在の姿になっていると考えられている。また、NGC7320Cの通過の際には活発な星生成活動が引き起こされた。その際に誕生した新たな星の集団が、NGC7318A/Bの左側や上部に見られる青い星の集まりだ。

また、NGC7318AとBは毎秒およそ1000キロメートルもの速度で接近しつつあることが知られていたが、今回のHSTによる観測以前の他の観測から、NGC7318BについてはNGC7320Cと同様に密集点をつっきりつつあるらしいということも判明していた。

これらの結果「ステファンの五つ子」は厳密には3つの銀河(NGC7317, 7318A, 7319)の集合であるということがわかった。これら3つの銀河は、やがて融合して1つになると考えられる。

この画像は、1998年12月と1999年6月にHSTの広視野/惑星カメラ2により撮影された、異なる隣接した2点を撮影した画像をつないでより広視野化したもの。

Credit: ESA