共食い型のコロナ質量放出が長期間の磁気嵐を引き起こす
【2001年3月29日 Science@NASA (2001.03.27)】
共食い型コロナ質量放出の例 2000年6月6日 (世界時)、NASA・ヨーロッパ宇宙機間 (ESA) 共同の太陽観測衛星SOHOの広視野分光コロナグラフLASCO C3による。画像中の時刻表記は世界時。4枚目で放出されたより速いCMEが、6枚目において1枚目で放出されたCMEに追いつき衝突・合体するようすがよくわかる。画像中の円盤は太陽面からの直接光を隠すディスクで、ディスク内の白い円が太陽の位置・直径を表す。太陽を隠すディスクのすぐ右の明るい光点は金星で、金星から横にのびるラインは露出過多の影響。 Credit: NASA / ESA |
太陽面で大規模な爆発現象 (フレア) が発生すると、それに伴なって大量の荷電ガスが放出される。このガス放出は、コロナ質量放出 (Coronal Mass Ejection; CME) と呼ばれ、その質量は10億トン級、速度は秒速にして数百キロメートル〜2000キロメートルにも達する。
このCMEが地球を襲うと、地球の磁気圏の形状をゆがめ、磁気圏に捕らえられている荷電粒子を加速して、磁気嵐が引き起こされる。また、南極や北極地方では美しいオーロラ (極光ともいう) が生じる。
太陽活動が沈静化しているときは、CMEは2〜3日に一度起こるだけだ。しかし、11年周期の太陽活動のピークにあたる2000年前後では、CMEは1日に数回も発生する。そして、CMEの速度には幅があるため、遅いCMEが発生したすぐ後に同じ場所からより速いCMEが起こると、速いCMEが遅いCMEに追いついて衝突・合体するという現象がしばしば起こる。この現象は、共食い型CME (Cannibal CME) と呼ばれる。
研究者たちは、この共食い型CMEは衝突・合体の結果規模が大きくなり、構造も複雑化するため、地球により長期間に渡る磁気嵐を引き起こす原因になると考えている。また、共食い型CMEはこれまで考えていたよりも頻繁に起こるということもわかってきた。