スーパーカミオカンデ
光電子増倍管数千本が損傷、使用不能に
【2001年11月13日 東大 宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設】
岐阜県神岡町にある東京大学宇宙線研究所 神岡宇宙素粒子研究施設の観測装置「スーパーカミオカンデ」で 12 日、観測の目にあたる光センサー(光電子増倍管)数千本が損傷する事故が起きた。何らかの理由で 1 本が壊れた結果、水圧の不均一が生じて連鎖的に残りが壊れた可能性があるとみられている。同日、早期の原因究明に向けて事故調査委員会が設置された。
スーパーカミオカンデは神岡鉱山の地下 1000 メートルに設置された巨大な水槽で、5 万トンの純水をたたえている。内部の側壁には 11,146 本の「光電子増倍管」と呼ばれるセンサーが付いている。このセンサーは、ニュートリノが水と反応した際に生じる微弱な光を捉える能力を持つ。この夏から水槽の水を抜いてセンサー数百本を取り替え観測精度をさらに上げる作業をおこなっており、今回の事故は再び水を張る途中で起こったものだった。被害総額は数十億円とみられている。
スーパーカミオカンデは 96 年 4 月から観測を開始。98 年 6 月にはスーパーカミオカンデで得られたデータをもとに「ニュートリノに質量がある」ことがほぼ確実であるという研究結果が発表された。この結果は当時の素粒子物理学の常識を覆すもので、宇宙の謎を解くカギにも迫っており、ノーベル賞級の非常に大きな意義がある。ニュートリノ観測は日本が世界をリードしている分野だが、今回の事故により研究が大幅に遅れる見通し。日本のみならず世界中の素粒子物理学者にとって大きな痛手となる。