銀河系内で一番重い恒星ブラックホール

【2001年12月6日 ESO Press Release

ESO(ヨーロッパ南天天文台)のパラナル観測所の望遠鏡を使って、これまで銀河系内で見つかったもののうちもっとも大きい恒星ブラックホールの研究がおこなわれている。

(連星系 GRS 1915+105 の想像図)。伴星から流れ込んだガスがブラックホールの周りに降着円盤を形成している。上下方向に伸びているのはジェット

ブラックホール連星系 GRS 1915+105 の想像図。伴星から流れ込んだガスがブラックホールの周りに降着円盤を形成している。上下方向に伸びているのはジェット(イラスト提供:ESO)

このブラックホール連星系は 1994 年に発見されたもので GRS 1915+105 という名前がついている。地球から約 40,000 光年離れており銀河面(銀河円盤の面)近くに位置している。銀河面にあるガスや塵のために可視光ではこの天体は見えないが、宇宙空間からの X 線観測で激しいバーストが観測されていた。

今回の観測はチリのパラナル天文台にある口径 8.2m の VLT(超大型望遠鏡)を使って赤外線波長でおこなわれた。赤外線も可視光と同じようにガスや塵でブロックされてしまうのだが、大型望遠鏡を使えば観測することができるのだ。

赤外線で観測することによってブラックホールの周りを回っている伴星の化学組成がわかる。化学組成からその星の質量や大きさを推定すると、この星は比較的質量が小さく、定常的にブラックホールにガスを供給していることがわかった。そのガスはアクリーションディスク(降着円盤)へと渦を巻きながら流れ込んでいるようだ。また、伴星の軌道運動の解析と星の推定質量からブラックホールの質量を計算することができる。それによるとブラックホールの質量は太陽の 14 倍で、年老いた星の崩壊によってできるほとんどのブラックホールの質量がその半分程度であることを考えると非常に重たい。

もっと大きなブラックホールは超大質量ブラックホールと呼ばれており、銀河の中心に見つかることがある。また、周りの物質を激しく消費しながら X 線を放射している活動的な超大質量ブラックホールはクェーサーと呼ばれる。一方、今回同定された恒星ブラックホールはマイクロクェーサーという特別な分類の天体だ。その名のとおりクェーサーの小型版で、周りの物質(今回の場合は伴星から流れ込んできたガス)をどんどん消費し X 線を放射している。