初めてダークマター天体の画像とスペクトルが撮られた

【2001年12月7日 ESA News

ついに、初めて、ダークマター天体を直接観測することに成功した。NASAESA(ヨーロッパ宇宙機関)のハッブル宇宙望遠と ESO(ヨーロッパ南天天文台)の VLT(The Very Large Telescope)を用いて観測していた天文学者たちは、近傍の矮星の写真とスペクトルを撮影し、その写真を公開した。

(ダークマター天体の写真)

HST が撮影したダークマター天体(赤色矮星)の写真(写真提供:NASA / ESA)

そもそもこの天体が存在することは 6 年前からマイクロレンズ効果と呼ばれる現象によってわかっていた。遠方の銀河などからの弱い光が地球に届く際、その間にある天体の重力がレンズのような役割を果たして、より明るく見えることがある。(場合によっては明るさが変動したり像が多重に見えたりすることもある。)このような現象を重力レンズ効果と呼ぶが、レンズとなる天体が今回見つかった赤色矮星や褐色矮星、白色矮星、さらにはブラックホールのような天体である場合、特にマイクロレンズ効果と呼ばれる。レンズ源となるほうの天体は暗すぎたり小さすぎたりするため、これまではマイクロレンズ効果を通じて間接的にその存在がわかるだけだった。

今回の観測で得られたレンズ源天体である赤色矮星の明るさや距離などは、6 年前のマイクロレンズ効果の時に明るさの変化の曲線だけから計算されたものと完全に一致した。今回の観測でさらに確かになったデータによると、この天体は地球から 600 光年離れており、質量は太陽の 5% から 10% 程度だということだ。

個々の銀河や銀河団の観測から、従来の電磁波による観測では見ることができない質量があることがわかっている。これら見えない質量を「ダークマター」と呼ぶが、その候補は大きく二つにわけられている。一つは、今回見つかったような非常に暗い天体である。電磁波を放出してはいるものの、暗すぎて現在の観測能力では検出できないというわけだ。これらの天体は MACHO(マッチョ、銀河系のハローにある大質量を持った小天体)と呼ばれている。もう一つは、電磁気的な相互作用をほとんど起こさず、したがってそもそも電磁波では検出できない粒子からできている。これらは WIMP と呼ばれている。(wimp は「弱虫」という意味で、もちろん macho=「マッチョ」と対比させているのである。)

ダークマターの問題は現在の天文学における最大の謎の一つである。今回のような観測によってその本質がもっと明らかにされることが期待されている。

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