ハッブル宇宙望遠鏡のACSカメラが撮影した最初の画像を公開

【2002年5月1日 STScI Press Releases

3月8日にスペースシャトル「コロンビア」の乗員によってNASAのハッブル宇宙望遠鏡に取り付けられたACSカメラが撮影した最初の写真が公開された。

いずれの写真も、「従来のWFPC2カメラに比べて解像度と視野面積が2倍、感度5倍」になったACSカメラの性能を十分に感じさせてくれる写真だ。また、はるか遠方の銀河から我々の銀河系内の天体まで、幅広い観測対象に威力を発揮してくれることも、今回公開された写真で示された。今後の活躍を大いに期待したい。

ACSカメラで撮影された4つの写真。(左上)「おたまじゃくし銀河」UGC 10214、(右上)「コーン星雲」NGC 2264、(左下)「オメガ星雲(白鳥星雲)」M 17の中心部、(右下)衝突している「ねずみ銀河」NGC 4676。(提供:NASA, H. Ford (JHU), G. Illingworth (USCS/LO), M. Clampin (STScI), G. Hartig (STScI), the ACS Science Team, and ESA

(左上)おたまじゃくし銀河

おたまじゃくしのように尾が伸びたように見える銀河UGC 10214の写真である。この銀河はりゅう座の方向にあって、距離はおよそ4億2千万光年である。尾にあたる部分は別の銀河と衝突した結果できあがったと考えられており、その長さは28万光年にも達する。渦巻きの腕の部分や尾の部分には若くて青い高温の星々が集まっている。

この写真は、背景に6,000個もの銀河が写されている点でも興味深い。「ハッブル・ディープ・フィールド」として知られている写真に写っていた銀河の2倍の数の銀河が、ハッブル・ディープ・フィールドの観測時間のわずか12分の1で撮影されたのだ。

(右上)コーン星雲の先端部

コーン(円錐)星雲と呼ばれるこの星雲は、いっかくじゅう座の方向にあり、地球からおよそ2,500光年離れている。このあたりは星形成領域で、誕生したばかりの高温の星から放射される紫外線を受けて水素ガスが電離し、写真のような赤い色を生み出している。

(左下)オメガ星雲の中心部

ギリシャ文字のオメガ(Ω)に似ていることからその名が付けられたこの星雲は、別名を白鳥星雲という。我々から5,500光年離れた、いて座の方向にある。コーン星雲や有名なオリオン大星雲と同じく、この星雲も星形成領域であり、新しい星々や、もしかすると惑星系が誕生している現場である。

青や緑、赤色に輝くガスの色は、高温の星からの紫外線によってエネルギーが高くなった水素や窒素、酸素、硫黄などの原子に特徴的なものである。

(右下)ねずみ銀河

かみのけ座にあるこれらの銀河は、長く伸びた腕が尻尾のように見えることから「ねずみ銀河」と呼ばれている。その距離はおよそ3億光年だ。見てのとおり、まさに衝突しつつあるところで、最終的には合体して一つの銀河になると考えられている。また、お互いに近づいて重力的な影響を及ぼしあったため、銀河の中のガスが圧縮され、多くの星々ができあがった。左側の銀河の青っぽく見える腕がその星々の集まりである。