ハッブルのACSカメラが撮影した銀河団による重力レンズ像
【2003年1月21日 HubbleSite - News Center】
NASAのハッブル宇宙望遠鏡に搭載されているACSカメラが撮影した、銀河団による重力レンズ効果を受けた銀河の写真が公開された。銀河の進化やダークマターに関する研究に新しい手がかりを与えてくれそうである。
銀河団Abell1689と、重力レンズによって引き伸ばされたり歪んだりした背景銀河(提供:NASA, N. Benitez (JHU), T. Broadhurst (Racah Institute of Physics/The Hebrew University), H. Ford (JHU), M. Clampin (STScI), G. Hartig (STScI), G. Illingworth (UCO/Lick), the ACS Science Team and ESA)
レンズ源となっているのは、おとめ座にある銀河団Abell1689で、地球からはおよそ22億光年離れている。この銀河団に含まれる数多くの星やダークマターが大きさ200万光年のレンズとなり、より遠方にある背景の銀河を増光して見せたり変形して見せたりしているのである。詳しい解析はまだであるが、中には130億光年も離れた銀河も写っているかもしれないということだ。
重力レンズ効果については、これまでにも地上の大型望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡の以前のカメラによって数多く観測され、レンズ源となっている天体や増光された遠方の銀河に関して研究が行なわれてきた。ACSカメラの高感度、高解像度の能力により、こういった研究がさらに進みそうである。
昨年3月にハッブル宇宙望遠鏡にACSカメラが取り付けられる際、重力レンズ効果を起こしている銀河団の撮影をシミュレーションした画像が公開されたが、今回実際に撮影された写真は、まさにそのシミュレーションどおりにたくさんの銀河を写し出している。今後の活躍にも大いに期待したい。