再び闇に包まれた中間質量ブラックホールの存在
【2003年1月26日 東京大学理学系研究科】1月27日更新
昨年9月、ハッブル宇宙望遠鏡による観測で球状星団の中心に中間質量のブラックホールが見つかったという発表があったが、東京大学などの研究グループが数値シミュレーションを行ったところ、この発表は誤りであったことがわかった。
研究グループは、球状星団の恒星1つ1つの動きをシミュレーションすることができる専用計算機「GRAPE」を用いて実際に球状星団が進化していくようすをモデル計算した。その結果、中心にブラックホールがなくても観測結果を説明できるという結論が得られたのだ。
シミュレーションの結果によると、時間が経つと球状星団の中心には中性子星や白色矮星といった天体が集まってくることがわかった。これらの重くて小さい(暗い)天体が中心に集まっているために、光で観測できるよりも大きな質量があることになるのだ。
ブラックホールには、太陽の数倍程度の質量の「恒星質量ブラックホール」と呼ばれるタイプと、銀河の中心にあって太陽の数百万倍とも言われる質量を持つ「超大質量ブラックホール」と呼ばれるタイプの2つがあることが知られているが、その中間にあたる数千倍程度のものはまだ見つかっていない。一度は見つかったと思われた中間質量ブラックホールだが、その存在は再び謎となってしまったようだ。
(1月27日追加)
上記で「一度は見つかったと思われた中間質量ブラックホールだが、その存在は再び謎となってしまったようだ。」と書きましたが、この点に関して「今回の研究ではM15などの球状星団の中心にはなさそうである、としか言えない」という内容のコメントをいただきました。あわせて、中間質量のブラックホールとしてはたとえばM82に見つかったものが可能性が高い([チャンドラ] 京大助手ら、中間質量ブラックホールを発見)ことをご指摘いただきました。ありがとうございました。