5月7日に水星が太陽面を通過

【2003年4月24日 国立天文台天文ニュース(632)

5月7日、水星が太陽面を通過するという珍しい現象が起こります。

水星は太陽系の中で最も太陽に近い惑星で、地球の軌道よりも内側にある内惑星です。内惑星は、地球から見て太陽からある一定の角度以上に離れることはありませんし、太陽と地球との間にやってくることがしばしばあります。これを内合と呼びますが、内惑星の軌道面は地球とは傾いているために、内合であっても、ほとんどの場合、太陽の上か下を通過することになります。ところが、ごくまれに太陽と地球を結んだ直線の近くを通過する、すなわち太陽〜水星または金星〜地球がほぼ一直線に並ぶ内合が起こります。この時には、地球から見て内惑星が太陽の表面を通り過ぎていくのが見えるわけです。これを日面経過あるいは日面通過と呼びます。

太陽面を通り過ぎるとき、地球から見た水星は明るい太陽を背景としているために、黒い小さな点として観察できます。観察には、天体望遠鏡および目を痛めないように、投影板などに映し出すなどの太陽観察のための特殊な工夫が必要です。高校生天体観測ネットワークでは高校生による体験観測を呼びかけ、観測マニュアルも整備・公開していますので、それらを参考にすると良いでしょう。

太陽面に水星が潜入するのは、14時11分頃ですが、通過には5時間ほどかかりますので、日本では通過そのものが終わらないうちに、太陽が沈んでしまいます。前回の水星の太陽面の通過は1999年11月16日に起こりましたから、今回は3年半ぶりの現象です。また次に起きるのは2006年11月9日となります。なお、もう一つの内惑星・金星の方はというと、来年6月8日に約122年ぶりの、日本で観測できる現象に限れば実に約130年ぶりの太陽面の通過があり、期待されています。

国立天文台三鷹キャンパスの常時公開コースにある20センチメートル屈折望遠鏡では、当日、特別に水星の太陽面の通過の様子を一般の方々へ公開する予定です。

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