火星の大きさ

【2003年7月22日 国立天文台天文ニュース(659)

火星が話題になるにつれて、国立天文台にも問い合わせが増えてきました。火星の見た目の大きさ、観望の時期などについての質問が寄せられています。

接近の日付が8月27日と聞いて、この日しか見ることができないと思われている人が多くいらっしゃるようです。

この日の視直径(見た目の直径)は25.13秒角(1度=60分角=3600秒角)ですが、これは、大接近の日の火星の大きさを1キロメートル先に置いた円の直径に換算すると12.18センチメートルに相当します。下の表に見るように、約一か月前の7月23日でも視直径は既に20秒角を超え、同じく10センチメートルを少し超えた大きさに相当します。

以下に、主な比較の表を載せますが、「火星大接近」という天文現象は、その日だけ・数日間だけの短い現象ではないことがお分かりいただけるかと思います。

日付 視直径(秒角) 1キロメートル先に置いた円が火星と同じ大きさの視直径になる実直径(センチメートル)
2003年 7月 2日 16.93 8.21
7月 9日 18.17 8.81
7月16日 19.46 9.44
7月23日 20.79 10.08
7月30日 22.10 10.71
8月 6日 23.28 11.29
8月13日 24.26 11.76
8月20日 24.90 12.07
8月27日 25.13 12.18
9月 3日 24.89 12.07
9月10日 24.22 11.74
9月17日 23.20 11.25
9月24日 21.96 10.65
10月 1日 20.59 9.98
10月 8日 19.20 9.31
10月15日 17.84 8.65
10月22日 16.55 8.02
10月29日 15.36 7.44

注:

  • 日本時間 21時の値
  • DE405(米国ジェッ ト推進研究所が惑星探査用に編纂した数値積分による惑星暦)による計算
  • 火星の赤道実半径は3396.2キロメートル(IAU(International Astronomical Union; 国際天文学連合) がIAG(International Association of Geodesy; 国際測地学協会) と共同のワーキンググループで2000年に採用した値)。
    これまでの、火星大接近の視直径25.11秒角は、以前に使われていた赤道実半径の値3393.4キロメートルで計算されていたもの。

参考:

天体 視直径(秒角) 1キロメートル先に置いた円が天体と同じ大きさの視直径になる実直径(センチメートル)
1988年9月22日の大接近時の火星 23.82 11.55
前回 2001年6月22日の接近時の火星 20.80 10.09
次回 2005年10月30日の接近時の火星 20.18 9.78
今年よりも接近する 2287年8月29日の大接近時の火星 25.16 12.20
衝の時の木星(2003年2月2日) 45.56 22.09
衝の時の土星本体(2002年12月18日) 20.64 10.01

また、表には過去の大接近の時の比較もあります。これを見ても判るように、見た目の大きさにそれほど違いがないこともお分かりいただけるかと思います。

8月の大接近の際の火星を見るには、日本など北半球の中緯度の地域では南中(真南に一番高く昇ること)してもかなり低い高度でしか見られません。見る時間にもよりますが、東から南、西が開けた場所で見るようにしましょう。

火星は見慣れないとなかなか表面の模様をはっきりと見ることが難しい天体です。表にもあるように、既に火星の視直径はかなり大きくなってきています(大きいといっても木星と比べると半分ほどの大きさしかありません)ので、そろそろ目を慣らすために、見はじめたほうがよいかもしれません。

「6万年ぶりの」などという数字だけが一人歩きしている感がありますが、数字だけに振り回されないようにしたいものです。

注:この数値は国立天文台の相馬充(そうまみつる)さんに確認をいただいたものです。