X線での観測により明らかになるブラックホールの回転
【2003年9月26日 Chandra Photo Album】
チャンドラとXMM-Newtonという2機の衛星を用いたX線観測から、恒星ブラックホールから発せられるX線のスペクトルを調べればそのブラックホールが回転しているかどうかがわかるということが明らかになった。
発表によると、X線のスペクトル中に見られる鉄原子に由来する構造を調べることで、ブラックホールの周りでガスがどのような運動をしているかがわかり、それによってブラックホールが回転しているかどうかを判断できるということだ。観測結果からは、有名なはくちょう座X-1はまったく回転していないらしいことや、別の2つのブラックホールが高速で回転していることが示された。
ブラックホールには大きく分けると少なくとも2つのタイプがある。1つは太陽の5〜20倍ほどの質量を持つ恒星ブラックホール、もう1つは銀河の中心にあり太陽の数百万倍以上の質量を持つ超大質量ブラックホールだ。このうち、超大質量ブラックホールについては高速で回転しているらしいということが以前から知られていたのだが、回転していると思われる恒星ブラックホールのスペクトルの特徴は超大質量ブラックホールのものと似ていた。ブラックホールのサイズが大きく異なってもスペクトルやブラックホールの周囲の空間が似ているというのは、別の大きな発見と言える。
恒星ブラックホールが回転したりしなかったりする差は何が原因だろうか。生まれ方が違うのだろうという説や、ブラックホールと連星系を形成している星からどのくらいの期間ガスが供給されるかによって回転速度が決まるのではないかという説があるようだ。