太陽に2つの巨大な黒点

【2003年10月27日 国立天文台・天文ニュース(679)

先週末から、太陽面上に2つの巨大な黒点が現れ、いわゆる肉眼黒点として話題となっています。肉眼黒点とは、肉眼で見えるほど大きな黒点(群)です。もちろん、日中は太陽がまぶしく、直接肉眼で見ることはできませんが、日没直前の減光された太陽などで、偶然に目撃されることがあります。実際、中国では『日没時に太陽の中にカラスが飛んでいるのが見えた』という古記録があり、肉眼黒点の記録と考えられています。

黒点群全体の大きさは、太陽の直径の10分の1ほどです。これは地球の直径の10個分に相当し、黒点群全体では地球が100個ほどすっぽり入ってしまい、木星よりも大きいことになります。

太陽黒点は太陽活動が活発になるときに、太陽面にたくさん現れます。太陽活動は2000年から2001年に活動期を迎えて、そのときには、たくさんの黒点群が出現したり、巨大黒点が現れました。現在、太陽は極小期に向かっているため、黒点数は減少しており、ほとんど目立つ黒点がない場合もあります。このような時期に、これだけ大きな黒点群がふたつも現れるのは非常に珍しいといえるでしょう。大きな黒点が出現すると、太陽フレアなどがが頻繁に起こるのが特徴で、実際に、この肉眼黒点に伴う現象がいくつも観測されています。

現在の肉眼黒点は、ひとつは太陽中心から西よりにあり、もうひとつは新しく南東部の縁に10月23日に現れたばかりです。これらの黒点は、まだ太陽面上に存在していますので、しばらく肉眼黒点として楽しめるでしょう。ただ、直接太陽を見ると目を痛めますので、観察するときには必ず慣れた方と一緒に、感光した「白黒」フィルム(カラーフィルムはだめです)で減光したり、日食グラスなどの特殊な減光フィルターを用いてください。直接目で見るのはあぶないので望遠鏡などで白板投影したものを見るようにしたほうが最もよい方法です。インターネット上のいろいろいなウェブサイトでも、今回の肉眼黒点の画像を楽しむことができます。

注:この天文ニュースは、和歌山県川辺町・かわべ天文公園の矢治健太郎(やじけんたろう)さんにいただいた文章を元に作成しました。

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