XMMニュートンによる、暗黒エネルギーの量に疑問を投げかける観測

【2003年12月22日 ESA News

ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のX線宇宙望遠鏡XMMニュートンで遠方の銀河団を観測した結果、宇宙に満ちていると考えられている暗黒エネルギーの存在量に大きな疑問が浮上した。

(銀河団の画像)

XMMニュートンによる銀河団のX線画像(画面中央のぼやけて見える部分が銀河団)(提供:ESA)

宇宙における物質密度は、宇宙の過去現在未来に関わる重要な要素だ。一般的なモデルでは、現在の宇宙は加速膨張しており、70%が正体不明の暗黒エネルギー(dark energy)、25%がダークマターで占められているとされている(残り5%が普通の物質)。このように物質密度はかなり希薄なものと考えられているのだが、今回のデータによれば、この概念と相反して、物質密度は高く暗黒エネルギーは少ないようなのだ。

今回のデータは、70億から100億光年離れたところにある8個の銀河団のX線観測から得られたものである。銀河団に含まれる高温ガスの温度や銀河団の質量を測定したところ、初期宇宙の銀河団は、現在のものより強いX線を発していることが明らかになった。これは、時間の経過とともに銀河団が刻々と姿を変えていることを意味している。しかし現在もっとも一般的な説によると、暗黒エネルギーに満ちた宇宙では、初期の銀河団はその成長を早くに止めており、現在の銀河団とは見分けがつかない状態になっているはずだということだ。つまり、姿が違うということは、暗黒エネルギーの量が少ないということを意味している。

また、モデル計算によると、過去にはほとんど銀河団が発生しない。この計算の意味するところは、宇宙は我々の概念に反して高密度の環境にあり、暗黒エネルギーの存在する余地が少ないということだ。宇宙の大半が暗黒エネルギーに包まれており物質が希薄な状態であるという概念は、本当に根底から否定されてしまうのだろうか。

もっとも、XMMのデータそのものが間違っている可能性も残されている。データの正当性を確かめるべく、他のX線観測も進められているので、宇宙の根本を揺るがすかもしれない次のニュースを待ちたい。