かつて赤色巨星に飲み込まれていた恒星の存在証拠
【2004年2月13日 Chandra Photo Album】
NASAのX線望遠鏡チャンドラによる連星系のX線スペクトル観測から、連星の一方の恒星がかつてもう一方の赤色巨星に飲み込まれていたと思われる証拠が見つかった。近距離連星系の進化に関する大きな発見だ。
おうし座V471は、白色矮星(主星)と太陽のようなありふれた恒星(伴星)とからなる連星系で、お互いの間の距離は太陽と水星の距離の30分の1程度とじょうに近い。この連星系のうち、伴星のX線スペクトルを観測したところ、窒素に対する炭素の量が少ないことがわかったのだ。炭素の量が少ない理由は次のように考えられている。
連星系のうち主星である白色矮星は、かつては太陽の数倍の質量を持つ恒星であった。約10億年かけて星が進化するうちに、恒星内部の核融合反応によって炭素が窒素へと変化し、恒星は赤色巨星となる。
この赤色巨星の段階(つまり、炭素が窒素に変わっており少ない段階)で、膨れ上がった巨星の内部に伴星が入り込み、炭素の少ない主星の物質が伴星へと移動した。その結果として、現在観測される伴星のX線スペクトル中で炭素が少なくなっているということである。つまり、伴星のスペクトル中に炭素が少ないのは、伴星がかつて主星の中にあって飲み込まれていたためであると考えられるというわけだ。理論計算によれば、主星の質量のうち10%ほどが伴星へと移動したと見積もられている。
主星は、赤色巨星の後もさらに進化して、現在の白色矮星の姿になっている。将来、伴星からこの主星へと質量が降り積もると、主星の白色矮星は超新星爆発を起こすかもしれない。