電波ヘリオグラフが捉えた金星の太陽面通過
【2004年6月8日 国立天文台 アストロ・トピックス(20)】
金星が太陽を横切る太陽面(日面)通過(経過)現象は、日本では全国的に天候に恵まれず、観察できなかった人も多かったようで、残念でした。そんな中、天候に関係なく、この現象を見事に捉えた観測装置があります。国立天文台野辺山太陽電波観測所の電波ヘリオグラフです。
電波ヘリオグラフとは、太陽観測専用の電波望遠鏡群で、ヘリオは太陽を、グラフは撮像装置を意味しています。直径80センチメートルのパラボラアンテナ84基からなり、東西490メートル、南北220メートルのT字型の線上に配置されています。1992年に完成し、その後、毎日太陽で起こる爆発現象などを電波で監視を続けています。太陽表面の電波の強さを、明るさの分布すなわち電波写真として捉えることができ、空間分解能は34ギガヘルツの電波で5秒角、時間分解能も0.1秒から1秒と、この種の装置としては世界最高を誇っています。連続して高速に撮影することができるので、ビデオ装置に似たイメージの方が適切かもしれません。主な太陽電波画像はウェブで公開され、学校・大学・社会人の教育機関での教育にも使われています。
今回の金星の太陽面通過でも、電波ヘリオグラフは悪天候に泣くことなく、見事に太陽面を横切っていく金星を捉えることに成功しました。すでに動画のムービーも作成され、公開されています(この画像は17ギガヘルツの電波による10秒角のものです)。金星の太陽面通過が電波で捉えられたのは史上初めてのことですので、歴史的な成果といえます。
今回の金星の太陽面通過は日本から観測できるのは、太陽面通過の前半だけでしたが、8年後の2012年6月6日には全過程が記録されることでしょう。