宇宙で最初に生まれた星の残骸と最遠の宇宙にある巨大ブラックホール

【2004年6月14日 Spitzer Press Release

NASAのスピッツァー宇宙赤外線望遠鏡が、活動銀河核の中心にあるわれわれからもっとも遠い巨大ブラックホールや、宇宙で最初に生まれた星の残骸と思われる天体の姿を捉えた。

(ブラックホールの画像)

深宇宙オリジン・サーベイ・フィールドに発見されたブラックホールの画像。(左)チャンドラによる画像、(中)ハッブルによる画像、(右)スピッツァーによる画像。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, A. M. Koekemoer (STScI), M. Dickinson (NOAO) and The GOODS Team)

これは、深宇宙オリジン・サーベイ(Great Observations Origins Deep Survey: GOODS)と呼ばれる計画のもと、ハッブル宇宙望遠鏡(可視光)、チャンドラX線観測衛星(X線)、スピッツァー宇宙赤外線望遠鏡(赤外線)の3つの望遠鏡がそれぞれの特色を活かして活躍した結果だ。3つの望遠鏡の目が向けられたのは130億光年離れた南天の一角で、この領域に1万個以上の銀河が含まれている。チャンドラX線観測衛星は200個以上のX線源を観測し、ハッブル宇宙望遠鏡はX線源となっているブラックホールを取り巻く銀河を観測した。しかし、ハッブル宇宙望遠鏡では捉えることのできなかった7つのX線源が謎として残った。

この7つのX線源は、長い間その存在が予測されていた、初期宇宙に存在していた活動銀河の中心を明るく輝かせる巨大ブラックホールではないかと考えられている。これらのタイプのブラックホールから捉えられたX線としては、これまででもっとも遠い宇宙からのものとなる。

ハッブル宇宙望遠鏡の100倍以上長い波長での観測が可能なスピッツァー宇宙赤外線望遠鏡がこの7つのX線源について観測を行ったところ、ここに予測どおり、ブラックホールを取り巻く銀河から発せられるひじょうに明るい赤外線の光を捉えることに成功した。ヨーロッパ南天天文台のVLTによる観測と合わせた結果から、この銀河はひじょうに濃いちりに覆われていると考えられている。おそらくそのような種類の天体の中ではこれまででもっとも遠くに位置する天体だろうということだ。また、まったく異なる色をした天体も捉えられているが、これらはわれわれの知るもっとも遠い天体である可能性も示された。

スピッツァー宇宙赤外線望遠鏡の観測では、可視光ではまったく見えず赤外線のみで検出される銀河も捉えられているが、これらはいわゆる「超赤色天体」の仲間ではないかと考えられている。このタイプの天体はほとんどが遠方の銀河で、年老いていたりちりを多く持っていたりするために赤く見える。スピッツァー宇宙赤外線望遠鏡が捉えたのは、宇宙の年齢がたった20億歳だったころに存在した銀河のようだ。もしかすると、今回観測されたひじょうに赤い天体は、宇宙で最初に生まれた星の残骸なのかもしれない。