X線で輝く星の胎児の謎

【2005年3月22日 NASA Feature

たいへん若い、星の胎児とも言える天体からX線が観測され、専門家を驚かせている。また、天体の表面に落ち込む物質の速度は重力から考えられる速度の10倍以上で、星形成に原始星の磁場が大きく関係していることが示唆されている。

(みなみのかんむり座R星形成領域の近赤外線画像) (星形成領域みなみのかんむり座R)

(上)みなみのかんむり座Rという星形成領域の近赤外線画像、クリックで拡大(下)星形成領域みなみのかんむり座R。6つの青い天体がX線で捉えた原始星。中央の白い矢印で示されているのが原始星IRS7B。左上は赤外線による同領域の拡大画像。クリックで拡大(提供:(上)UH88 / Nedachi et al.、(下)ESA/XMM/Subaru/UH88)

ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のX線宇宙望遠鏡XMMニュートンなどによって観測されたのは、われわれから500光年ほど離れた若い天体で、年齢は1万から10万歳程度である。この天体で核融合が始まり自ら光り輝き始めるには、まだ数百万年の年月を待たねばならない。このような原始星から、はっきりとX線が観測されたのは、初めてのことだ。

宇宙では、X線は大量のエネルギーと熱の放出によって生み出される。しかし、今回観測された星形成領域みなみのかんむり座Rのようなクラス0の原始星は、通常は摂氏-240度と低温の天体で、X線を放射しそうにもない。一方、みなみのかんむり座Rでは、原始星へ落ち込む物質の速度が重力の作用による速度より10倍も速いことが観測されている。専門家によれば、回転する原始星の核の磁場の影響で星へ落ち込む物質のスピードが加速され、高温になってX線が放射されるのだろうということだ。

今回、星の胎児の住処とも言えるガス雲の内部の観測から、若い星の形成には重力以外の力が重要な役割を果たしているらしいことが示された。今後も同様の観測、研究が進めば、冷たいガスの雲が星へと姿を変えるプロセスが解明されていくだろう。