火星探査機スピリット、火星の流星群を発見か?
【2005年6月2日 国立天文台 アストロ・トピックス(107)】
地球で流星が出現するように、大気のある惑星であれば流星現象は存在します。アメリカの探査機ボイジャー1号は、木星に接近した際に木星の夜側で非常に明るい流星を捉えたことがありますし、地球型の惑星である火星や金星でも、同様に流星は存在するだろうと予測されていました。
特に流星が特定の時期に多く流れる流星群は、惑星と彗星の軌道が交差していることから起きる現象です。調べてみると、いくつかの彗星の軌道が火星の軌道と交差しており、そこを通過する時期には、火星でも流星群が起きているのではないか、と考えられていました。
2004年3月7日、火星探査機スピリットのパノラマカメラが火星での流星現象を捉え、研究の結果、これが火星で定常的に出現する流星群のものである可能性が高くなりました。
火星で流星群を起こすと予測されていた彗星のひとつが、6.7年ほどの公転周期を持つワイズマン・スキッフ彗星(114P/Wiseman-Skiff)です。この彗星の軌道は火星軌道と交差していて、計算によれば2004年3月11日前後に流星群が出現する可能性があると予測されていました。スピリットが流星を撮影したのは3月7日ですので、時間的には十分に近いといえるでしょう。流星群の活動は前後一週間ほど継続することが多いからです。また、撮影された流星の経路や光り方から推定された速度も、計算上の予測とよく合っていました。これらのことから、今回撮影された流星は、たったの一例ではありますが、ワイズマン・スキッフ彗星を母彗星とする火星の定常流星群のはじめての検出といえるでしょう。
この流星群は火星の公転周期ごとに毎回出現するとされていますが、今回と同様に多数の流星出現が期待されるのは、計算によれば、2公転後の2007年12月20日前後と予測されています。