「第10惑星? 2003 UB313」には衛星があった
【2005年10月13日 Caltech Media Relations】
太陽系10番目の惑星ではないかと注目されている「2003 UB313」は、調べるほどに「太陽系内の主要な住人」と呼ぶに足るだけの特質が見つかっているようだ。発見者たちがこの惑星につけた愛称はXena(ゼナ)(注)。最新の計算結果からは、冥王星より20パーセントほど大きいということが明らかとなっており、また太陽からの距離は、97天文単位(144億キロメートル)。これは現在観測されている太陽系天体としてはもっとも遠い位置だ。そしてさらに、9月10日に2003 UB313に衛星が発見されたのだ。
衛星につけられた愛称は「Gabrielle(ガブリエル)」(注)。発見された衛星の明るさは、2003 UB313の100分の1。2週間ほどの周期で2003 UB313のまわりを回っている。直径は2003 UB313の10分の1ではないかと見られる。ちなみに2003 UB313の直径は2700キロメートルと推測されている。ちなみに、冥王星の直径は2274キロメートルだ。
実際のこの衛星を発見したのは、米カリフォルニア工科大のマイケル・ブラウン教授を初めとした、ケック天文台、エール大学、ジェミニ天文台の研究者からなる研究チームだ。ブラウン教授は一方では「衛星が発見されることは2003 UB313が惑星であるかどうかの議論とは関係のないことだ」としつつも、「ほとんどの大きな惑星には衛星があるのだから、2003 UB313にも見つかったというのはよいことです」と述べている。
もちろん、2003 UB313を巡る衛星が存在することには、それ以上の意義がある。衛星の軌道、すなわち2003 UB313からの距離と公転速度がわかれば、2003 UB313自体の質量が計算できるのだ(逆に言えば、2003 UB313の質量を求める手段は他に存在しない)。衛星が速く公転していれば、2003 UB313は重く、遅ければ軽いことになる。2003 UB313が何でできているか、そして、重さでもほんとうに冥王星を上回っているのかどうかが注目されている。衛星の軌道を細かく分析するために、ハッブル宇宙望遠鏡による観測が11月と12月に予定されている。
2003 UB313は冥王星とともに、「エッジワース・カイパーベルト」と呼ばれる、海王星より外側に広がる小惑星が大量に存在する領域にある。2003 UB313の発見が発表されると同時期に、冥王星に近いサイズのエッジワース・カイパーベルト天体が二つ発表されていて、うち一つの2003 EL61にも衛星があることが知られていた。冥王星にも衛星「カロン」が存在することを考えれば、「四大カイパーベルト天体」のうち3つに衛星があることになる。より小さなカイパーベルト天体にも、衛星が発見されているものが多い。従来、こうしたカイパーベルト天体の衛星は、別々の天体が重力で引き寄せられてお互いの周りを回るようになって形成されると考えられてきた。しかし、冥王星の場合は、別のカイパーベルト天体が衝突することで飛び散った破片がカロンになったと考えられており、他の大きなカイパーベルト天体の場合もこちらの方が成因として有力だ。
ブラウン教授は語る。「かつて、冥王星は太陽系の最果ての『はみ出し者』だと思われていました。しかし今や、ゼナ(2003 UB313)や冥王星は、似た性質、歴史、さらには衛星を持った大きな天体の一員だとわかっています。これらを一緒に研究することにより、孤独なはみ出し者を調べるよりもはるかに多くのことがわかるのです。」
編集部注:惑星の愛称は一部の研究者が便宜的につけたものであり正式な呼び名として承認されたものではありません(衛星の愛称も同様)。
「2003 UB313」は第十番目惑星?: 仮に「2003 UB313」が冥王星より大きかったとしても「第十番目の惑星」と言えるとは限りません。冥王星や2003 UB313の周辺に大きな天体がいくつも発見されているからです。現在、IAU(国際天文学連合)では、「惑星の定義」を決める作業部会を結成して議論を交わしている最中です。(「太陽系ビジュアルブック」より一部抜粋)