シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星、分裂核がさらに分裂
【2006年4月28日 国立天文台 アストロ・トピックス(208)】
5地球に接近しつつあるシュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星(73P/Schwassmann-Wachmann、シュワスマン・ワハマン彗星と表記されることが多い)の分裂核が、さらに分裂を繰り返している様子が各地で観測されてます。
前回のアストロ・トピックスでもご紹介したように、シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星は太陽に近づくたびに、これまでも何度か分裂を経験してきた彗星です。今回も、以前に分裂した核がそのまま帰ってきただけでなく、今年3月には新たに4つの核が発見され、さらに4月に入ってから、小さな核が発見されていき、その数は30個を超えています。
最も明るい核であるC核は、いまのところ変化はありませんが、次に明るいB核、その次に明るいG核のふたつが、4月のはじめに急激に増光しました。とりわけB核は、一時はC核と同じような明るさとなったほどです。その後、二つの核とも明るさは平常に戻っていきましたが、どちらも分裂に伴う増光であったことがわかってきました。B核では、比較的大きめの破片が離れていく様子が、日本各地のアマチュアや公開天文台で撮影されつつあります。とりわけヨーロッパ南天天文台の口径8メートル VLT(Very Large Telescope)望遠鏡では、B核から離れていく7つの破片が捉えられています。
一方、G核の場合、もともとの核が暗いこともあって、明らかな分裂破片は地上観測では捉えられていませんでした。解像度の高いハッブル宇宙望遠鏡で4月18日に撮影された画像では、B核と同様に数多くの小さな破片が"ミニ彗星"となっている様子がわかります。
これら小さな破片は、かなり短い期間で蒸発し尽くしてしまうのではないか、と考えられていますが、それらがどの程度の寿命となるか、また今後もさらに分裂が続いていくのか、大変興味深いところです。また、このような興味深い現象が、地球に近づく状況で起こっていることも、世界中の研究者が注目する理由となっています。この彗星の地球への接近距離は約1200万キロメートルで、これまで軌道がわかっている彗星の中での地球への接近距離としては歴代21位となります。
国立天文台でも、この彗星については重点的な観測が今後予定されており、新しくできた石垣島天文台1メートル望遠鏡、50センチメートル社会教育用公開望遠鏡、すばる望遠鏡等による観測が予定されています。