「惑星」とは何だろう−系外惑星探索の新局面

【2006年6月14日 ESO Science releaseNews@UofTCfA Press release

かつて、人類は地球と太陽とその他の惑星を正しく分類できなかった。観測技術が発達して太陽系の姿が正しく理解できるようになってから、「恒星の周りを公転する天体」が惑星、「惑星の周りを公転する天体」が衛星として定義された。しかし、今や技術はさらに発達し、太陽系外の星の姿も詳しく調べられるようになってきている。われわれは再び、「惑星」とは何なのか考え直さなければならない時を迎えている。


(2M1207と2M1207Bの画像)

(2M1207Bの想像図)

(上)VLTが赤外線で撮影した褐色矮星2M1207。左下に惑星質量天体2M1207Bが写っている(提供:ESO)

(下)2M1207Bとそれをとりまく円盤の想像図。同じケンタウルス座の方向にある銀河NGC 5128が描かれている(提供:David A. Aguilar (CfA))

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カナダのカルガリーで開催されたアメリカ天文学会で、星の周りにガスとちりの円盤を発見したとする2つの発表があった。系外惑星の発見が相次いでいる現在、円盤の発見はまったく珍しくないが、驚くべき事に円盤が見つかった星は、木星の数倍程度の質量しかないのだ。これは今知られている系外惑星の典型的なサイズである。では、円盤のガスとちりが集まったら「系外衛星」になるかというと、事はそう単純ではない。そもそも、円盤に取り巻かれた星自身が恒星の周りを回っていないので、惑星とは呼べないからだ。

サイズで言えば惑星だが、恒星から独立している天体は「惑星質量天体(Planetary mass object)」と呼ばれている。もう少し大きい褐色矮星(解説参照)の場合、取り巻きの円盤が見つかっているものもあり、誕生のメカニズムが普通の恒星と同じであると考えられるようになってきている。惑星質量天体にも円盤があるということは、同じ事がいえるだろう。

惑星質量天体の周りの円盤を発見したと報告したのはどちらもヨーロッパ、アメリカ、カナダの研究者からなるグループ。最初の研究では、ヨーロッパ南天天文台の望遠鏡、VLTNTTを使って450光年離れた星形成領域にある6つの天体を観測した。うち2つは木星の5〜10倍、すなわち惑星質量天体である。誕生してからわずか数百万年しか経っておらず、放射されている赤外線から大量のちりを含む円盤の存在が明らかになった。

一方、同じくVLTを使った観測では、ケンタウルス座にあって170光年離れている2MASS1207-3932B(略して2M1207B)と呼ばれる惑星質量天体がターゲットとなった。木星の8倍の質量をもつ2M1207Bは同25倍の褐色矮星である2M1207と連星になっているが、両者は太陽と冥王星ほど離れていることから、2M1207Bは褐色矮星の原始円盤から生まれた惑星ではなく独立して誕生した天体のようだ。褐色矮星2M1207は絶対温度で2600度、惑星質量天体2M1207Bは1600度と、誕生してからわずか500〜1000万年であることを反映して暖かい状態にある。質量と温度から求められる理論上の明るさに比べて、2M1207Bが暗いことから、光をさえぎる円盤が存在すると結論づけられたのだ。

これらの惑星質量天体を取り巻く円盤から、惑星質量天体の周りを回る「衛星」が誕生したら、どんな光景になっているかは想像もつかない。しかし、似たような例はすぐ近くにある。太陽系最大の惑星・木星と、その衛星だ。木星自身は、太陽が誕生したときの原始惑星系円盤から誕生したが、その際に木星の周りにも小さな円盤が形成され、数々の衛星となったと考えられている。その中でも大きい4つの衛星を17世紀にガリレオが望遠鏡で発見した時、彼は地動説を確信したという。こうしてできあがった「惑星」と「衛星」という言葉の意味も、太陽系外の巨大な木星型天体を観測する現代のガリレオたちによって変えられていくのかもしれない。

惑星と恒星のあいだ

太陽の質量は木星のおよそ1000倍ですが、もし、木星があと80倍の質量を持つ星に成長していたとしたら、木星内部の温度と圧力は十分高まって水素原子が核融合反応を起こし、太陽のように光り輝く星になっていたかもしれません。木星が現在の10倍の質量を持っていたとすれば普通の水素の核融合反応は起こせませんが、普通の水素原子に中性子が一つくっついた「重水素」の核融合反応ははじまります。重水素は数が少ないので、すぐになくなってしまい、燃え尽きてしまいますが、余熱によりしばらくは赤外線を発し続けます。このような天体は「褐色矮星」と呼ばれています。(「太陽系ビジュアルブック」より抜粋)