探査車スピリット、火星に落下した隕鉄を発見か
【2006年6月20日 NASA Mission News】
火星探査ローバー(探査車)「スピリット」が隕鉄と見られる2つの岩石を発見した。もし本当に火星に落下した物体だと確かめられれば、双子のローバー「オポチュニティ」が2005年1月に発見して以来2例目となる。
右の画像で手前に写っている岩石は、他と違って表面がなめらかで、色も薄い。この岩石の名は「アラン・ヒルズ(Allan Hills)」。ここには写ってないが、すぐそばで見つかった岩石「中山(Zhong Shan)」とともに、宇宙空間から火星に落下した隕鉄ではないかと考えられている。
今、スピリットが探査している地域は冬を迎えている。日照時間が少ないため、スピリットはほとんど動かずに周囲を撮影しているが、そんな中で見つかった岩石には、地球の南極に存在する各国の基地などにちなんだ名前がつけられている。「中山」は中国の南極基地で、「アラン・ヒルズ」は南極にある地名だ。特にアラン・ヒルズは数多くの隕石が発見されることで有名な場所で、なかでも火星に起源を持つ隕石「ALH84001」は「生命の痕跡があるのではないか」と大いに話題になった。
スピリットと対をなすローバー、オポチュニティは2005年1月に隕鉄を発見している。スピリットの熱放射分光計の測定から、「アラン・ヒルズ」も「中山」もオポチュニティが見つけた隕石と同じように、反射率が高いことがわかった。もし2つの岩が隕鉄であるとすれば、小惑星に起源を持っているかもしれない。
2004年1月に火星に送り込まれ、当初の探査期間を大幅に過ぎて運用を続けているスピリットも、現在はひじょうに厳しい状況に置かれている。6つの車輪のうち右前輪は駆動しなくなり、火星の土壌でスリップを繰り返しながら進まなければいけない。しかも、スピリットの現在地は冬のまっただなかで、日照時間が少ないため1日あたり1時間半しか稼働できない状態なのだ。運用チームは探査よりもローバーの安全を最優先し、春が来るのを待っている。いつまで探査が続けられるかは分からないが、少しでも長い間地球に火星の情報を届けてくれることを期待したい。
スピリット
2003年6月10日、アメリカが打ち上げ。2004年1月3日、「グゼフ・クレーター」への軟着陸に成功。古代の火星における水と気候に関する調査を行い、生命の痕跡を探す。「オポチュニティ」と同一のローバー。(スペースガイド 宇宙年鑑2006より)