スワン彗星の増光は分裂が原因

【2006年11月14日 IAUC 8772, CBET 738】

国際天文学連合回報(IAUC)などで報告されたところによれば、10月下旬にスワン彗星(C/2006 M4)が急激に増光した原因は、彗星核の分裂だった。大きなかたまりに分かれたというよりは、複数の破片がはがれた状態のようだ。当初から、分裂が増光を引き起こしたとする考えは有力だったが、時間が経過し、ようやく観測で確かめられるほどまでに破片が離れてきている。


スワン彗星は現在、地球からおよそ1.1天文単位(1天文単位は地球と太陽の平均距離)の位置にあり、少しずつ遠ざかっている。そのため、直接彗星の核を見わけることは困難だが、周囲に広がったコマから核の様子を推測することができる。

10月24日に起きたコマの急増光は、核の表面で物質の蒸発が急激に進んだことを物語っている。その原因が核自体の分裂ではないかという見方は有力だった。しかし、それは分裂した破片がじゅうぶんに遠ざかり、コマが変形するまでは確かめられないことであった。

11月7日、アメリカ・スチュワート天文台の6.5メートル望遠鏡MMTがスワン彗星を中赤外線で撮影したところ、中央の集光部から3.4秒角(2700キロメートルに相当)の距離で43度の位置角に、分離したコマが見つかった。分離したコマは同じ位置角の方に引き延ばされていて、明るさは本体の半分弱であった。

分離したコマが存在するということは、その中心には分裂した核の破片が存在するということである。しかし、分かれたコマが引き延ばされていることから、破片は1つではない。おそらく、急増光のときに大きめの破片が複数、同時に分離して、現在もまとまった集団を形成しているのだと考えられている。似たような現象は、今年の4月にシュワスマン・ワハマン彗星(73P)のB核やG核でも見られた。

なお、中央局電子電報(CBET)738で、分離した破片の位置予報が公表されている。

《スワン彗星本体に対する分離片の位置》

日時(TT)距離位置角
2006/11/115"39゚
2006/11/219"35゚
2006/12/0113"31゚
2006/12/1117"27゚

<参照>

  • IAU Circular No. 8772 (2006 Nov 11): COMET C/2006 M4 (SWAN)
  • Central Bureau Electronic Telegram No. 738 (2006 Nov 13): COMET C/2006 M4 (SWAN)

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